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プロローグ
「お前は将来、王子となり子を産むだろう」
海の魔女の末裔だという老婆により、厳かな声色で語られた予言の言葉は、箴言のように深く、幼いシエラの胸に刻まれた。
「ああ、シエラは私と同じ、人魚族を束ねる王の器を持っているのだ」
隣で喜び安堵する父を不思議に思い、帰りの道でシエラは尋ねた。
「ねえお父様、どうしてぼくが王子になるとうれしいのですか?」
「シエラも、なれば分かるさ。王子になれば、他の者には得られない宝物を得られるんだ」
「宝物かぁ。よくわかんないけど、がんばります」
満足げに頭に手を置かれ、期待に応えたいと思いながらシエラは悟った。
これこそが自分の運命なのだと――。
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