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第3話 情報は歪みがち
遡上する鮭の行く手をグリルで阻んでいると、
"炎上請負人"という称号を掲げる配信者からコラボ申請が届いた。
普段なら許可するわけにはいかないが、
今日は法律の存在に気付いて丸一週間記念日。
警察の家宅捜索サプライズに免じて、寛大な心で接してやろう。
楕円秘情報の暴露でも、ガスバーナーの操作手順解説講座でもどんと来い。
「あ、初めまして! 早速、自己紹介いいですか?」
可愛らしい娘じゃないか。
艶やかな長髪を後頭部・腎臓内部・特別捜査本部で束ねたトリプルテールだ。
よく見れば、頭髪と皮膚の間にきめ細かい段差が無限に設けられているから、
インフィニティブロックでもある。
新進気鋭の髪型に面食らった俺は黙って頷くことしかできなかった。
「ありがとうございます! 暮らしを支えるガス・電気・水道!
インフラアイドル"SeiKatsu KibaN"1期生の不可欠です!
みんな、"ふっか"って呼んでね」
胡散臭い小娘じゃないか。コンセプトを決めたプロデューサーの神経を疑う。
どうせ地下で内閣に媚びを売っているソロアイドルだろう。
観客席で機密文書をばら撒きながら、
鼻の下を伸ばしている官僚の姿が容易に想像できる。
「違いますよ~。"ひっつ"こと必要とのれっきとしたコンビですから!」
必要不可欠。ますます胡散臭い。どちらに貢げばよいのか迷ってしまうだろうが。
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