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第4話 ふれあい
握手券が同梱されたCDセットを手始めに100枚買うとして、
余ったCD本体をいかに売り捌こうか。
生憎、俺の家にはCDを再生できる機器がないのだ。
強いて言えば、朱色の他人から譲り受けた蓄音機が
脱衣所の床にめり込んでいるだけである。
「転売は根絶が難しいから黙認されているよ!」
まさかの公式推奨。アイドルらしい専用の呼び方まであるとは。
それでは遠慮なく富士山の山頂からCDを縦に転がそう。
運良く買い手のもとまで届けば転売成立。これが本当の……
「くだらないシャレはマナー違反。絶対にやめてね!」
ごめんなさい。公の場で叱られることほど情けないものはない。
コメント欄も俺へ向けられた罵詈雑言で盛況している。
急いで鎮火せねば。とりあえず消火器の元栓を外し、
中身を一滴残らず、配信に使用しているスマートフォンに吹き掛けた。
「……じゃあ、デスゲームを始め……
実は私、ロサンゼルスで忍者を8000人雇って……
うん、もう正気でいられない!……」
せっかく面白くなりそうなところだったのに。
スマートフォンは心肺蘇生の甲斐なく故障してしまった。
恐らく人工呼吸の回数が足りなかったか。
落胆する俺の足元で激しい水しぶきが絶えず飛び散る。
そうだ、鮭の産卵を忘れていた。
まずは川の水を粗方抜き取るべきか? いや、アロマセラピーで落ち着こう。
かぐわしい匂いを最大限取り込むため、
息を深く吸い、しばし止めて、ゆっくり意識を朦朧とさせていく。
撮影現場は三途の川へ。
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