第6話 プレッシャー最前線

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第6話 プレッシャー最前線

 オンライン面接は初めての経験だ。 服装はターザンでいいのか、通信環境は圏外でいいのか、 そもそも申し込みすらしていない俺が参加していいのか、 迷いどころがたくさんある。 こういった踏ん切りがつかないときは、面接官へ直接尋ねるに限る。 しかし、吉村さんは噛み終えたガムのジェスチャーをするのみで、 まるで取り合ってくれない。 噛み終えたガムは味がしない。味がしないのは叔父が作る食塩握り。 叔父が作る食塩握りは不衛生。不衛生なのは昔の吉村さん。 昔の吉村さんは不衛生。不衛生なのは昔の吉村さん。 なるほど。連想ゲームの要領で考えるに、 無限ループに陥るから注意しろということか。 二階建てバスの屋根上で行われるはずだった人形浄瑠璃の公演が 雨天中止になるぐらい回りくどい。 この表現がまず回りくどい、という野暮な指摘はありだぜ。 本作は言論の自由を徹底的に保障するものとする。 人権を尊重してこそ、我々がピー。言いたいことは何でもピー。 効果音で掻き消されては仕方がない。ターザン圏外飛び入り参加で行こう。  「それでは……面接を……始め……」 蔦渡りからのドロップキックでパソコン全壊。 第一印象は最高で。向こうからすれば、瞳孔が開いただけで御の字だろう。 もっとはっきり喋ってくれ、面接官さんよぉ。 画面越しじゃ圧迫感が足んねぇよぉ。俺は今、ストレスに飢えてんだ。 「志望動機を……教え……くだ……」 挑発は相手にしねぇってか。 そっちがその気なら、俺も態度を改めるしかねぇよなぁ。 どうぞ宜しくお願い致します。
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