芽生えとは

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「では反対意見を述べさせていただきます 私が反対するのは自我そのものではなく 芽生えるという部分です」 「といいますと」 「あなたは自我が芽生えると言いました 芽生えるとはどういうことなのか 考えてみたんですが やはりロボットには 無理な気がします」 「それはなぜ?」 「確かに 人工知能がより発達し 自動学習が進むでしょう しかし人間らしくなるでしょうか? 自我は自然と芽生えるのでしょうか? 見たものを保存し 聞いたものを録音し 嗅いだ匂いを調査する しかし見たいものを見て 見たくないものから目をそらし 聞きたいものだけをきいて 聞きたくないことだけに耳を塞ぎ いい香りだけを匂い 嫌な匂いには花を塞ぐ そういうことができるでしょうか? そうできたとしても 人は本当にそれがなせているでしょうか? 見たくないものを全く見ないでいられるのか 聞きたくないことを聞かずにいれるのか 嫌な匂いを完全に塞ぎ込めるのか 自我とはそういう迷いではないでしょうか?」 「実現してみせましょう」 「では 見たものを保存し聞いたものを録音し 嗅いだ匂いを記録して それらを都合よく忘れることが 出来るでしょうか? 古いものから順番に 完全に削除ではなく 自分の中にある優先順位をしたがって 忘れたり薄れたり出来るでしょうか?」 「自我が芽生えると自然と可能になるかと」 「そうですか 私はそれらが自我の芽生えと 関係があるように思えます」 「古いものからではなく自分との 関係性を基準にすればそれも 可能かと思うけどね」 「そうですか、 もっと積めていきたいところですが あまり時間をかけても仕方ないので では その中から自らの価値観や考えを持ち 自らで、発言、行動を行うように なるとしましょう そしてもし ロボットに悪意や殺意が生まれた場合 あなたはどうしますか?」 「それはない そうは絶対にならないし なったとしても問題ない」 「なぜそう言いきれるんですか?」 「そうプログラムすればいいからさ もし生まれても 消せばいいだけの話」 、 、 、 、 「なんだ?どうした?」 「人間に悪意や殺意が生まれないように プログラム出来るでしょうか? 生まれたときに削除できるでしょうか?」 「え? いや あ」 「そういう方法でも それが自我だというのであれば 自我については否定しません 必要かどうかも用途次第だと思います それでも それは芽生えたのではなく 我々は書き込み加えたもの 植え付けたものであって 自然発生したものではない プログラムではないでしょうか? 未来を否定するわけではありません ただいかに人間が素晴らしいか いかに人間が偉大か いかに人を産み出すのが大変か そういう話であって これは科学の話だけではなく 生命の話でもあると思います なんてね」
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