失態。

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失態。

自分の部屋に入り、扉を閉めた瞬間ズルズルとその場に座り込んだ。 あんな顔させるつもりじゃなかったのに。 1人で舞い上がって、雪白くんの気持ちを考えてなかった。 俺は自分自身の愚かさに失望した。 俺がしなくてはいけないことは、『中山くんとのすれ違いを解消する』ことだったのに。 それもできていないどころか、雪白くんを傷付けてしまった。 俺に告白されたことがそんなに嫌だった…? いや、でも「好きだ」って囁き続けたときの反応は悪くなかったはずだ。 雪白くんも嫌じゃないって言ってたし…。 俺は何故あんな顔をさせてしまったのか考え続けた。 だがなかなか思い浮かばず、今はとりあえず中山くんと雪白くんを仲直りさせることに集中することにする。 雪白くんに中山くんのこと話さなくてよかったかもしれない。 もしあの時その話題を出してたら、俺の話も聞いてくれなくなっていたかも。 俺は少し悩んで、中山くんにLimeを送った。 『今君の話をしても聞いてくれないだろうから、様子を見ていこうと思う。 少し時間がかかりそうなんだ』 すると中山くんから『わかりました』と返信が来る。 それを確認して、俺は今自室にいるであろう叶翔の所へ向かった。 ドアをノックして返事を待つ。 しばらくしてドアが開かれると、そこにはレモンティーを飲みながらスマホを触る叶翔の姿があった。 「どうしたんだ、雪白くんとなんかあったのか?」 「んん〜、やっぱりわかっちゃう?」 「お前が俺の所に来る時は雪白くんのことくらいだからな」 「えぇ、そんなことないよ?可愛い弟と何気ない会話をしに来る時もあるでしょ」 「…まぁなんでもいいけどよ」 叶翔は少しめんどくさそうにレモンティーをコップに注いで、俺に差し出してくれた。 「座ったらどうだ?」 「ん、ありがとう」 俺はお言葉に甘えて叶翔の隣に腰を下ろした。 「んで?なんかあったのかよ」 「…俺って雪白くんに嫌われてるのかな」 思わず口に出た言葉に自分でもびっくりした。 やば、こんなこと言うつもりなかったのに。 チラッと叶翔の方を見ると、ぽかんとしていた。 …なにその顔。 「お前、それ本気で言ってんのか?」 「…」 俺はなんだか少し気まずくて、目線をさ迷わせた。 叶翔はため息をはいて、口を開く。 なんだか喉が乾いて、俺は叶翔からもらったレモンティーを口に含んだ。 「これ、雪白くんには絶対言うなよ」 「うん?」 「春月から聞いたんだけどよ、雪白くん夜になると寝言でお前の名前呼んでるらしいぞ」 叶翔の口から出た衝撃の事実に驚き、傾けたままのコップからレモンティーが流れる。 「ちょっ、湊翔!レモンティー零すな! 折角俺の大切なレモンティー分けてやったのによ!!」 え、怒るのそこ? 普通床が汚れるとかじゃないの? まぁフローリングだしいいよね。 うん、大丈夫大丈夫。 なんてあえて呑気な事を床を見ながら考える。 ドキドキと高鳴る鼓動が、期待と共に高まっていった。
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