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第一章 助けてくれたのは。
笑顔が素敵で、かっこいい貴方に。
恋をしてしまいました。
名前も知らないのに、こんなにも惹かれてしまうなんて_______。
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僕の名前は椎名 春月(しいな はる)。
県立の男子校、青南高校に通っている高校2年生だ。
どこにでもいるような黒髪に、平凡な顔立ち。勉強が少しできるというだけでこれといった特徴は無く、スポーツに至っては自他共に認めるダメダメな男だ。
そんな僕は今…
知らないおじさんに迫られてます。
なぜこうなったかは、少し前に遡る。
今日は土曜日で、元々学校には行かなくていい日だった。
だが分からない問題があったので、先生に質問するために通学したのだ。
その帰宅途中、あのおじさんに『道をおしえてほしい』と声をかけられた。
変な雰囲気を纏った人だったが、困っている人は見過ごせないと思い、笑って『いいですよ』と答えたのだった。
まぁ、その結果がこれである。
回想おわり。
路地裏に入り、バンッと壁に押し付けられる。
ぶつけた所がじんわりと痛んだ。
逃げようにも、おじさんの腕が両側にあるため、身動きが取れない。
どうしよう、動けない…!
「っ、やだっ!離してください!!」
おじさんハスハスしてるし、息荒いし…。
怖い。
僕は震えた声で精一杯「やめて」と言うが、おじさんはそれにも興奮したように僕にたたみかける。
ツーっと嫌な汗が背中を流れた。
「はは、やめてだなんて酷いなぁ。
君、俺の事見てたよね?うるうるした可愛い目で見つめちゃってさぁ。
俺が声かけるの待ってたんでしょ?
ふふふ、可愛いねぇ。そんなに嫌がって。
照れ屋さんなんだね?
大丈夫、俺はわかってるからね」
そんな風に一息で言いながら、僕の腕をグイッと引っ張ると、自分の腕の中に僕を収めようとする。
「触らないでっ」
やだっ、やだぁー!
やっぱりあの時、道案内なんて断ればよかった。そのまま家に帰っていればよかった。
こんな人気のないところじゃ、誰も助けてくれないのにっ。
僕はせめてもの抵抗で腕を解こうと藻掻くが、ヒョロヒョロでちっこい僕ではそれも無駄に終わった。
「怖い…。誰か助けてっ」
怖くてちゃんと声が出ない。
とてもとても小さな声だった。
周りに人がいても、辛うじて聞こえたか聞こえないかくらい。
ふいにおじさんの顔が近付いてきて。
キスされる。そう思った時。
おじさんの体が目の前からフッと消えて、どこかでおじさんの「ぐぇっ」というカエルが押し潰されたような声が聞こえた。
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