遅刻して来た人は。

2/2
前へ
/82ページ
次へ
叶翔先輩!? 思いっきり目があったのは、なんと遅刻してきた叶翔先輩だった。 …学校来たんだ。 顔見れた。嬉しい。 どうしよう、にやけちゃう。 僕は口元を隠しながら、叶翔先輩を見続けた。 先輩も僕と目が合うとは思わなかったのか、少しびっくりしたような顔をしたがニコッと笑ってくれた。 それだけで、きゅーんと胸が暖かくなる。 なにあの笑顔。可愛い。 ずるい。 可愛すぎてだめ。 僕が叶翔先輩に悶えていると、先輩が何か言っているのに気付いた。 良く分からなくて次はしっかり口の形を見ると、『昼休み』『屋上』。 たしかに先輩はそう言っていた。 分かりました、の意味を込めて手を『グット』の形にすると先輩は満足したような顔をして校舎に入って行った。 はー、可愛かったな。 昼休みか。今日は4時間目で終わりだから、SHRが終わってから行けばいいかな。 そう思って前へ視点を戻すと、みんなに見られていることに気付いた。 「…へ?」 僕が間抜けな声を出すと同時にバッと勢い良く前を向くクラスメイト達。 先生までもが僕を凝視していた。 ……やからした? ニヤニヤしてるとこ見られちゃった? 僕は恥ずかしくて、「あぁぁぁ」と声を零しながら思わずうつ伏せになった。 _______________ 〜クラスメイトside〜 俺のクラスには、天使がいる。 その名も、椎名春月。 顔も可愛いが、性格も可愛い。 少しぽけっとしてる所も、危なっかしいが可愛い。なぜだかほっとけないのだ。 そんな彼は、とても頭がいい。 のほほんとした外見と雰囲気によらず、努力家で勤勉だ。 いつもテストは上位をキープしているし、授業態度もいい。 きっと成績表は5でいっぱいなんだろう。 そんな真面目な春月くんが、今日はどうやらおかしい。 悩まし気に「はぁ…」とため息を吐き、外を眺める。 その光景がなんと美しいことか。 小さな口から出てくる色っぽいため息は真夏に吹く冷たい風のように俺たちのむさ苦しい教室に救いを与える。 春月くんの席だけが輝いているのだ。 クラスメイトはもちろん、先生までもが思わず魅入っていた。 『可愛すぎるぜこんちくしよぉぉぉぉぉぉ』 『なんて君は美しいんだっ』 『はぁぁぁぁぁ、もうダメだ。死のう』 そんな男らの心の呟きが聞こえる。 おっと、天に召されそうなやつもいる。 まぁそれは仕方がない。 だって、春月くんは美しすぎるから。 俺たち雑魚では一瞬にして灰にされるのだ。 このクラスで彼の隣にいて許されるのは、眉目秀麗の小鳥遊壱生くらいだろう。 それくらい、春月くんは天使であり女神なのだ。 ふと、春月くんの口元が緩んだ。 彼はさりげなく口元を手で隠す。 そして食い入るように外を眺めて、『グット』の手を作った。 その一連の流れのなんと可愛らしいことか。 俺たちは授業中ということも忘れて生暖かい目でそれを見守り、彼の視点が黒板に戻った瞬間一気に視線を元に戻す。 しかし俺たちが少し遅かったため見ていたことが呆気なく本人にバレ、春月くんは恥ずかしくそうに声を発して机にうずくまってしまったが、それをまた生暖かい目で見守る俺たちであった。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

182人が本棚に入れています
本棚に追加