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屋上で。
SHRが終わり、僕は教室を飛び出した。
だって、早く叶翔先輩に会いたかったから。
もう認めるしかない。
僕はきっと叶翔先輩に恋をしているのだ。
屋上へ続く階段を駆けあがり、「叶翔先輩!」と名前を呼んだ。
返事がなかったので周りを見渡すと、カバンを枕にして寝ている叶翔先輩を発見した。
…っ可愛い。
先輩が寝てる。
「……綺麗だ」
僕は思わず口にして、綺麗な顔を晒して眠り続ける叶翔先輩を眺めた。
「んん…」と声を出し、寝返りをうつ先輩に、愛でたい欲が駆り出される。
…可愛い。ほっぺつついたらバレるかな。
僕はいけないことだと思いながら欲に勝てず、ぷにっとほっぺたをつつこうとした。
次の瞬間、パチッと先輩の目が開く。
それなのに僕の手は止まってくれなかった。
_____ぷにゅっ。
可愛い効果音を鳴らして、僕の指は叶翔先輩のほっぺたに触れた。
「ふぁー、柔らかい…」
ってそうじゃない!!
僕は慌てて手を引っ込めようとしたが、それより早く叶翔先輩が僕の手を優しく掴む。
「…春月。なにしてんだお前」
僕はタラーっと背中に汗を伝わせながら、言い訳を考えた。
「えー…とぉ」
先輩の寝顔が可愛かったから。
ほっぺたが気持ちよさそうで触りたかったから。
もっと先輩に触れたかったから。
…先輩と、近付きたかったから。
くっ…どれ言ってもダメだ…!
僕は頭をフル回転させるが、言い訳らしい言い訳が思い浮かばなかった。
えーい、ままよっ!
僕はさっきの理由4つをそのまま叶翔先輩に伝えた。
すると、呆気にとられた後にニヤッとして先輩は僕の手を自分のほっぺたに誘導する。
「えっ、ちょっ…せんぱ…!」
僕が焦ると、先輩はニヤニヤしながら「俺ともっと近づきたいんだろ…?」と言った。
うぐっ。
かっこいい。
そうです。近づきたいんです。
でも…心がもちませんっ。
僕がプルプル震えていると、先輩はパッと手を離してニヒッと効果音が着きそうな笑顔で笑った。
「あはは、ごめんな。つい可愛くて意地悪したわ」
「っ」
そういうすぐ僕を揶揄うところ、本当に湊翔先輩と似ている。
『からかわないでください!』と、湊翔先輩の前では軽く言えたのに。
なんでだろう。叶翔先輩には言えない。
他の人にはできても、先輩だけにはできないことがある。
逆に、先輩にはできても他の人にはできないことがある。
これも恋だから…?
恋って、よくわかんないな。
でも一つだけ確かなのは。
僕はやっぱり叶翔先輩が好きってこと。
先輩の笑顔1つで幸せになれるなんて、自分はとんだ安上がりなのかもしれない。
先輩にも僕を好きになってほしくて、『好き』って想いを込めてニコッと笑った。
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