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「それで、なんで僕は屋上に呼ばれたんですか?」
僕と話す為に体を起こした先輩にそう聞いた。
「ん?いや、特に意味はねぇが。ただ春月に会いたかったからな」
「え」
な、なんですと…!!
『会いたかった』
確かに先輩はそう言った。
「…っそう、なんですね。僕も会いたかった、です」
「ん?なんて言った?よく聞こえなかった。特に最後な。もっかい言って」
なんて聞こえているくせに白々しく言ってくる先輩。
僕はキッと彼を睨むと(実際には上目遣いになっている)、「もう言いません!」と怒った。
「はは、そうかよ。そっか、春月は俺に会いたかったのか」
嬉しそうに笑う先輩にきゅんとしながらも、「やっぱり聞こえてるじゃないですか!」と拗ねる僕。
クスクス笑う先輩が可愛いからいいか、と許してしまう僕はきっとチョロい。
「んで、なんで荷物全部持ってんだ?」
散々笑って落ち着いたのか、先輩が伸びをしながら僕に聞いた。
「今日は午前授業だったので、もう帰れるんです。屋上寄ってからそのまま帰ろうかと思ってて」
そう説明すると、「そうだっけか…?」と忘れている様子の叶翔先輩。
あ、今日遅れて来てたけど大丈夫だったのかな。
「先輩今日遅刻してきてましたよね?先生に怒られませんでした?」
「あ?あぁー。そうだな。俺は問題児だからな。先公には何も言われねぇよ?ん、1人だけうるせー奴がいるな。でもそいつ以外の先公は俺と関わりたくねーんだろ」
まぁいつもの事だからどうでもいい、と興味なさげに言った。
「俺は学校にあんまり来ねぇし、来ても屋上にいるから授業は出ねぇな」
学校に来ねぇと会えない友達もいねぇしな、と先輩は付け加えて笑った。
「そう、なんですね」
やっぱり毎日は会えないよな、としゅんとする。
たくさん会えたら、どれだけ幸せだろう。
残念に思いながらも返事をした。
「あー、でも1人いたわ、学校に来ないと会えねぇやつ」
えっ。
「そいつのためなら、毎日学校に来るのも悪くねぇ」
……そんな存在の人がいるんだ。
______ズキン。
もしかして先輩は、その人のことが好きなのかな。
その人が羨ましい。叶翔先輩にそこまで言わせるなんて。
いいな、先輩と会えて。
僕だって会いたいのに。
「っ、きっとその人も先輩に毎日学校に来てほしいって思ってますよ」
無理やり笑顔をつくってそう言う。
笑え。笑え。笑わないと。
全部顔に出ちゃうから。
見せたくない。嫉妬してる顔なんて。
「へぇ、ほんとかな」
「そうですって!……僕なら、そう思います」
「ふぅん。なら毎日来るから昼飯は一緒に食おうな、春月」
そう言われて、僕は下を向きがちだった顔をバッと上にあげた。
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