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「_____今、なんて…」
「だから毎日一緒に昼飯食おうって。なんだよ、俺と食うのは嫌なのか?
毎日学校に来てほしいってさっきの言葉は嘘かよ」
「っ、嫌な訳でも嘘でもないです!でも…。先輩の言ってた人が僕だなんて思わなくて」
それが僕だったらいいのにって思ってた。
…でもほんとに僕だったなんて。
信じられない。
どうしよう、嬉しい…。
「そうか。んじゃ、昼休みに屋上集合な。学食でもいいけどよ。春月は弁当持ってくんのか?」
……先輩とご飯?
え、何それ天国?
僕ラッキーすぎ。天に召されそう。
ダメだ。先輩とご飯食べるまで死ねない。
ヨシヨシと僕の頭を撫でながら言う先輩を、僕は呆けた顔をして見ている。
「お弁当は自分で作って持ってきてます。忙しいとたまに学食になりますけど」
っていうか、ずっと先輩頭撫でてる。
やばい、手大っきい……。僕とは違う。
暖かくて、優しい先輩の手。
僕を抱きしめてくれた手。
「弁当自分で作ってんのか。すげぇな。俺は購買とかコンビニで買ってくる派だ」
むむ、先輩はお弁当じゃないのか。
良ければ僕が作って持ってきたいけど…。
さすがにそこまでするのはありがた迷惑かなぁ。
「そうなんですね。ということは湊翔先輩も?」
「あぁ、湊翔は周りから色々貰ってるぞ。ファンクラブの奴とかな」
「なるほど…」
さすが湊翔先輩。
手作りのお弁当とかお菓子とかいっぱい貰ってるんだろうな。
男子校にも「え、君女子?」みたいな可愛くて女子力高めの子が少なからずいる。
その中でも飛び抜けて可愛いのは春月だが、本人は気付いていないのだ。
ちなみに春月にもファンクラブ(非公認)がある。
「……春月も、湊翔が気になるのか?」
え?とキョトンとした顔で叶翔先輩を見返すと、先輩は僕から少し目線をずらして言う。
「湊翔は俺と違って頭もいいし周りから期待されてる。みんなあいつを好きになる。だから、お前もそうかと思ったんだ」
少し悲しそうに、諦めを感じさせるような雰囲気に僕は首を傾げる。
「僕は湊翔先輩のこと好きですけど、それは人としてであって深い意味ではありませんよ?」
そう。僕が好きなのは湊翔先輩ではなく、叶翔先輩なのだから。
どうして叶翔先輩がその話をしてきたか分からないが、それだけは変わらない。
春月『も』ってことは、昔そういう人が誰かいたんだろうか。
…イヤだな。
でも少なくとも僕は、その人じゃない。
「…そうか」
叶翔先輩はニコッと笑って「変なこと聞いて悪かったな」と言った。
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