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「…2年のとこまで行くか」
俺はスマホをポケットにしまうと、春月の元へ向かった。
そこで目にしたのは、楽しそうに他の男と笑い合う春月の姿。
俺は思わず、愛しい人の名前を読んでいた。
「_____春月」
自分でも、少し驚くくらい低い声だった。
腹の底から黒い感情が勢い良く溢れて来る。
なにしてんだ、お前。
俺を待たせておきながらそんな男にヘラヘラして。
俺と帰るよりその男と話す方がいいのか?
なぁ、俺がお前を待ってること忘れてた?
名前を呼ばれて俺の存在に気付いたのか、「待たせてごめんなさい」と小走りで近寄ってくる春月。
あぁ、可愛い春月。
何をしていても本当に可愛い。
そのクリクリな目も、華奢な身体も、ふわふわの髪も。クルクル変わる表情も、何気ない仕草だって。
誰にも見せたくない。
その純粋で澄んだ瞳に俺だけを映して、俺だけに反応して。
俺だけの為に生きてほしい。
……あいつ、邪魔だな。
俺の春月と馴れ馴れしく喋りやがって。
きっと俺は今嫉妬に塗れた醜い顔をしているんだろうな、と心の中で失笑する。
こんな感情を抱いているのがバレたら、きっと春月は離れて行ってしまうだろう。
恋人でもないのに嫉妬されるのは誰でも嫌だと思う。
嫌われるのだけは避けたかった。
春月と出会ったあの日、初めて目があった瞬間時間が止まったように感じた。
直感でわかったんだ、春月は俺の運命の人だと。
誰にも奪わせない。俺だけの宝物。
春月は俺を気にもとめずに、さっき話してた男に手を振っている。
……そうやってみんなに愛嬌を振りまくのか。
俺と話す時の笑顔も、たまに見せる膨れっ面も、まるで俺を「好きだ」とでも言うよな目線も。
俺だけに向けていると思っていたのに。
他の男にも、その柔らかくて暖かい笑みを向けるのか。
今だけは我慢しよう。
でも、もし俺が春月の彼氏になった暁には_____。
俺は春月の隣に立っていた男を睨みつけると、「こいつに手を出したら殺す」と念を送っておく。
動かない俺を不思議に思ったのか、「叶翔先輩?」と可愛い声で俺の名前を呼び首を傾げる春月に、「ん、どうした?」とニッコリ笑ってやる。
「っ、なんでもないです。早く行きましょ」
少し照れているのか、すっと前に進む春月に俺は「……絶対誰にも渡さねぇ」と呟いて歩き出した。
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