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「んじゃ、そろそろ出るか」
叶翔先輩は俺にキスをした後、何事もなかったように席を立った。
あれ?
僕達今キスしたよね?
先輩全然恥ずかしがってない?
慣れてる???
俺は嬉しさがありながらも、そう考えて少し気分が落ち込んだ。
そっか、僕の初めては全部先輩になるんだろうけど。
先輩の初めては僕じゃないんだ。
座ったまま黙っていた僕を心配して、「春月?」と先輩から声をかけられる。
「あっ、はい!出ましょう」
僕は笑顔をつくって、先輩に応えた。
カフェからの帰り道で、僕はもう一度お礼を言った。
「おごってもらっちゃってすみませんっ。ご馳走様でした!」
あの後先輩は僕の分のお金も払ってくれた。
申し訳ないからいいって言ったんだけどな…。
『俺にかっこつけさせろ』って…。
カッコよすぎ!!!!
僕は早速叶翔先輩にきゅんきゅんさせられた。
「いや、全然大丈夫だ。アイツと比べたら安いもんだ」
「ありがとうございます。あの、あいつって…?」
誰のことだろう。
もしかして、元恋人さん…?
ズキン、と胸が痛む。
「いや、あいつってのは…」
そう答えながら複雑そうな顔をする叶翔先輩。
そっか。元恋人って言いにくいもんね。
……わかってるよ。
僕が最初の恋人じゃないことくらい。
だって、先輩はこんなにも素敵で。
僕にはもったいないくらいの人だ。
「変なこと聞いちゃってごめんなさい!」
僕はそう言うと、話題を変えようと新しい話題を口にする。
「あ、そういえば。最近新しいアイスのお店出来たらしいんですよ!今度はそこに
行きません?」
次は僕がおごります!と付け加えることも忘れない。
先輩1人に負担させるのは嫌だしね。
それに何より、僕だって男の子だもん。
好きな人に奢ってみたりしたいっ!
「おぅ。わかった。楽しみにしとくわ」
そう言って笑う叶翔先輩にほっとする。
良かった、変な空気にならずに済んで。
僕は色々と気にしすぎなんだよ、きっと!
先輩だって元恋人さんと僕なら僕を選んでくれるはずだし!
大丈夫。先輩を信じよう。
そう自分に言い聞かせて、僕は落ち着きを取り戻した。
それから色々と話して行くうちに、家まで着いてしまった。
「あ、僕の家ここです。送って頂いてありがとうございました!
カフェすごく楽しかったです。
それに、付き合えるようになったし…。
僕は世界一幸せ者ですっ!」
そう言って満面の笑みで笑うと、叶翔先輩は僕の頭を撫でながら「尊い…」と呟いた。
尊い…?
俺がはてなマークを浮かばせてるうちに、先輩の手は離れてしまった。
あ…。もうちょっと撫でててほしかったな。
でも、わがまま言えない!
こんな風に会えて話せるだけで、幸せ…!
「俺の方こそありがと。またカフェ行こうな?今日は記念日だな。来月はお祝いしよう。俺もすごく幸せだ」
「はいっ!」
俺が返事をすると、先輩はフッと笑った。
くっ……!かっこいい……!
なんだか色気がすごいような???
俺がワタワタしていると、先輩は僕をスっと引き寄せて、耳元で囁いた。
「…浮気すんじゃねぇぞ?」
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