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「…手、ごめん。心配したんだ、すごく」
「うん。僕なら大丈夫だよ、ね?」
「…うん」
どうやら僕は可愛い弟にとても心配をかけてしまったみたいだ。
雪白にあんな顔をさせるなんて、お兄ちゃん失格だな、僕は。
「…それで迫られてどうしたの?まさか犯されてないよね!?キスもされてない?」
ガバッと勢いよく顔をあげ、雪白は僕の両肩をガッと掴んだ。
「おかっ…!!!犯されるわけないだろ!!」
何言い出すんだ、うちの子は!
犯されていない、と聞いてほっとした様子の雪白。
でも春月は可愛いから充分有り得る。とか何とか言っているが、聞かなかったことにした。
確かに、中には妊娠薬(薬を飲むことで子宮が作られ妊娠できるようになる。病院でしか処方されないが、犯罪は後を絶たない)を飲まされて望まない妊娠をさせられる人もいるが。
「助けてくれたんだ。同じ学校の叶翔先輩、が……」
僕はその時の叶翔先輩を思い出して、ドキッとした。
「大丈夫か?」と優しく声をかけてくれて。
僕が安心できるようにと微笑んでくれた。
とてもかっこよかった。
まるで、僕を護る騎士みたいで_______。
どっかに飛んで行っていた僕は、雪白の僕を呼ぶ声で引き戻される。
「そっか。よかった。んで、その助けてくれた先輩に惚れたの?」
「!?そんな訳ないだろ!」
叶翔先輩に惚れる?そんな訳ない。
だって先輩にとって僕なんかそこら辺の後輩だ。助けてくれたのはただの善意であって、好意ではない。
あんなにかっこいい先輩だもん。
きっと素敵な恋人が……。
僕なんて見向きもされない。
_____ズキン。
なんで?…痛いな。
僕が叶翔先輩を好きなんて。
「…そんなこと、あるわけない」
「…そっか。まぁ、その人にはお礼をしないとね。僕から母さんと父さんには言っとく。春月からは言いにくいでしょ」
そう言って僕の頭をポンポンとする雪白。
これじゃどっちが兄かわかんないな。
でもそういう所、すごく助かる。
「ありがとう、雪白。大好き」
「ん。知ってる」
雪白はふいっと顔をそらすと、「ご飯できたら呼ぶから上あがったら?」と言う。
どんな表情をしているのかこっちからは見えないが、耳が赤くなっているのできっと照れているのだろう。
可愛いなぁ、ほんと。
僕は「んーん、雪白の近くにいたいからリビングにいる」と言ってまたソファに腰を下ろした。
「そう。料理の邪魔しないでね」と言ってキッチンへ移動しながら内心喜んでいることがバレバレな雪白に、気付かないフリをした。
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*雪白が『上あがったら?』と言ったのは、2階に春月の部屋があるため。
ちなみに春月の部屋の隣は雪白の部屋。
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