第一章 助けてくれたのは。

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第一章 助けてくれたのは。

笑顔が素敵で、かっこいい貴方に。 恋をしてしまいました。 名前も知らないのに、こんなにも惹かれてしまうなんて_______。 _______________ 僕の名前は椎名 春月(しいな はる)。 県立の男子校、青南高校に通っている高校2年生だ。 どこにでもいるような黒髪に、平凡な顔立ち。勉強が少しできるというだけでこれといった特徴は無く、スポーツに至っては自他共に認めるダメダメな男だ。 そんな僕は今… 知らないおじさんに迫られてます。 なぜこうなったかは、少し前に遡る。 今日は土曜日で、元々学校には行かなくていい日だった。 だが分からない問題があったので、先生に質問するために通学したのだ。 その帰宅途中、あのおじさんに『道をおしえてほしい』と声をかけられた。 変な雰囲気を纏った人だったが、困っている人は見過ごせないと思い、笑って『いいですよ』と答えたのだった。 まぁ、その結果がこれである。 回想おわり。 路地裏に入り、バンッと壁に押し付けられる。 ぶつけた所がじんわりと痛んだ。 逃げようにも、おじさんの腕が両側にあるため、身動きが取れない。 どうしよう、動けない…! 「っ、やだっ!離してください!!」 おじさんハスハスしてるし、息荒いし…。 怖い。 僕は震えた声で精一杯「やめて」と言うが、おじさんはそれにも興奮したように僕にたたみかける。 ツーっと嫌な汗が背中を流れた。 「はは、やめてだなんて酷いなぁ。 君、俺の事見てたよね?うるうるした可愛い目で見つめちゃってさぁ。 俺が声かけるの待ってたんでしょ? ふふふ、可愛いねぇ。そんなに嫌がって。 照れ屋さんなんだね? 大丈夫、俺はわかってるからね」 そんな風に一息で言いながら、僕の腕をグイッと引っ張ると、自分の腕の中に僕を収めようとする。 「触らないでっ」 やだっ、やだぁー! やっぱりあの時、道案内なんて断ればよかった。そのまま家に帰っていればよかった。 こんな人気のないところじゃ、誰も助けてくれないのにっ。 僕はせめてもの抵抗で腕を解こうと藻掻くが、ヒョロヒョロでちっこい僕ではそれも無駄に終わった。 「怖い…。誰か助けてっ」 怖くてちゃんと声が出ない。 とてもとても小さな声だった。 周りに人がいても、辛うじて聞こえたか聞こえないかくらい。 ふいにおじさんの顔が近付いてきて。 キスされる。そう思った時。 おじさんの体が目の前からフッと消えて、どこかでおじさんの「ぐぇっ」というカエルが押し潰されたような声が聞こえた。
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