ガバラとギグル

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その頃、アメリカやヨーロッパ諸国では、感染者の数が、どんどん増えて そのワクチン作りを急いでいたが まだ、生産ラインに乗せる所までは、行っていなかった。 マウス病は、カロナーと違って、重傷者の半数は死に至る。 それが分かった各国の政府は、日本以上に焦っていた。 この調子では、ワクチンが出来るまでに、恐ろしいほどの人が死ぬと、、。 そして、また、古村製薬が、良い薬を作っているという噂を聞き 何とかして、その薬を手に入れたいと、日本政府や古村製薬に働きかける。 涼香は、美里村に来て、聖たちと相談した。 「このままでは、カロナーの時と違って、犠牲者は、格段に多くなるわ。 下手をすれば、地球の人口の三分の一が、亡くなるかも、、」 「ええっ、そんなに?」聖たちは驚く。 「ええ、だから、仙人草の事を話して、世界中で栽培させ 薬を作らせたいの、良いかな」「聖、どうする?」快哉と、譲が、聖に聞く。 「う~ん」天界の薬草を、下界で広めて良いものか、決断できない聖は 「玉翆、構わない?」と、天界の薬師である、玉翠の意見を求めた。 「ええ、出所さえ、分からなければ、構いません」玉翠の許しが出た。 「涼香さん、出所をうまく隠してくれれば、大丈夫です」聖の言葉に 「有難う、さっそく、その手配をします」 涼香は、そう言うと、大急ぎで帰って行った。 「玉翆、天帝様のお許しを貰わなくても、良かったの?」聖がそう聞くと 「ええ、もともと下界の人を救うためにと、下された物ですし 薬師の私が居ながら、大勢の人を、死なせる訳には、いきませんから」 玉翠はそう言うと「さて、うまく誤魔化してくれますかね」と、呟いた。 翌日、涼香は「マウス病に関して、お知らせしたい事が有る」と 外国の記者も沢山集めた中で、記者会見をした。 あの古村が、どんな事を発表するのかと、会場には、人が溢れかえった。 その人々が、固唾をのむ中「古村製薬は、マウス病に掛かった人の 重症化を防ぐ、薬を作りました」涼香のその言葉に ドォ~ッと、会場中が揺れた「本当ですか?」 「その薬は、どの位有りますか?」「我々の国にも、頂けますか?」 記者たちは、てんでに口を開き、大騒ぎになった。 司会者が、両手で皆を静め「その件に関しても、古村さんが 詳しくお話して下さいます」と、言い、やっと静かになる。 涼香は、話を始めた「古村製薬が、カロナーの封じ込めに作った ゼリーの事は、皆さんもご存じでしょう、そのゼリーを作るために 古村が貯蔵していた、秘蔵の高麗人参は、殆ど使ってしまいました。 その、空っぽになった袋の底に、小さな種らしき物が、10粒ほど有りました もしかしてと、その種を撒くと、わずか数日で大きな株に成長し 種が沢山採れました。その種を、さらに撒いたので 今、ハウス5棟分に、あの高麗人参だと思われる草が 青々と育っていますが、あの高麗人参になるまでには きっと、気の遠くなるような、年月が必要だと思われます。 しかし、私は、マウス病の症状を見た時 あれだけの効能が有る、高麗人参だ、もしかしたら、この葉っぱが マウス病に効くかも知れないと、考えました。 日本には、古来より、薬草の葉を使った、塗り薬が作られていたからです。 直ぐに、その葉っぱを使って、塗り薬を作り、患者に試したところ 一気に症状は軽くなり、重症化せずに、退院させる事が出来ました」 「オオ~ッ」と言う、感嘆の声が上がる。 「今、工場で、その薬作りに、全力を挙げていますが、とても 感染者の数には、追いつけません、それと言うのも、この葉っぱは 一枚一枚、手で摘まないと、効果が減るのです」 皆は、真剣に涼香の話を聞き、メモを取る音だけが、会場に響いた。
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