ガバラとギグル

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「私は、この草に古村草と言う名を付けました、この古村草の育て方と 薬にするレシピを添えて、種を各国に譲りたいと思っています」 「オオ~ッ」またも大きな歓声が上がる。 「幸い、この草は、種を撒けば、すぐに芽を出し、一週間で 青々と茂ります、その葉を半分ほど摘み、薬にしたら、残りの草に花を咲かせ 種を取り、その種を撒く、それを繰り返せば、沢山の薬が出来ます。 各国の皆さん、頑張って古村草を育て、マウス病に打ち勝ちましょう」 「オオ~ッ」と言いう事で、古村草と名を変えた、仙人草の種は 各国へと送られて行った。 「涼香さん、うまく誤魔化してくれましたね」 テレビで、記者会見を見ていた聖たちは、そう言いあった。 「これで、マウス病も、下火になるだろうが、問題は、鼠だな」 と、快哉が言う「そうなんだ、マウス病の菌を持った鼠は なぜか普通の寿命の半分ほどで、死んでしまうらしい」 この話は、玉翠が、涼香から聞いたと言う。 「それじゃ、いくら鼠算式でも、増えないって事?」聖が聞く。 「そうなんだ、何も悪い事をしていないのに、鼠が可哀そうだろ?」 「確かに」悪いのは、そんな菌を鼠に植え付けた、ガバラだ、鼠に罪は無い。 病原菌を持っているかも知れないと、今の様に、片っ端から 退治していては、本当に、鼠が居なくなってしまう。 「そこで私は、そんな鼠を救う、薬を作った」「え?いつの間に?」 「お前たちが、せっせと仙人草の種を撒いていた時だ」 そう言った玉翠は、自分の部屋から、段ボールを持って来た。 その中には、小さな粒が、ぎっしり入っていた。 「これが、その薬?」「そうだ、鼠が好きな臭いを付けている」 「本当に、これで、鼠が救えるの?」聖も、快哉も譲も、半信半疑だった。 「心配するな、薬師と鼠は、切っても切れない仲なんだ」 「えっ?」「出来上がった薬が、効くかどうか、まず鼠で試しているからな 鼠の事は、熟知しているんだ、持って来た天界の薬と、仙人草の種を調合して 新しい薬を作った、これを食べさせれば、体の中の菌は、死ぬはずだ」 「でも、どうやって、世界中に居る鼠たちに、食べさせるの?」 「まぁ、人が寝静まった所で、街中にばらまくしかないな」「ええっ」 「それは、、」「あまりにも無謀な、、」快哉と譲が、首を振る。 「だが、やるしかない、やらなければ、鼠は、絶滅するかも知れないんだ」 そういう玉翠の言葉に「やろうよ、少しでも助ければ、絶滅は防げる 後は、鼠算式に増えてくれる筈だ」聖がそう言った。 「そうだな、じゃ、早速やるか」夜になるのを待ち 三人は、三つの袋に分けた薬を持ち 「まず、一番感染者が多い、インドからやるか」「良いね」 筋斗雲で、あっという間にインドに飛び、筋斗雲の上から、ぱらぱらと 小さな路地を狙って、薬を撒く。 「インドは、広いな~」それでも、全部の薬を撒き終え、夜明け前に帰る。 部屋では、徹夜して、薬を作っていた玉翠が、眠そうな顔で出迎えた。 「お疲れ~」「そっちも、お疲れ~」互いにそう言い合って 風呂に入ると、四人とも、死んだように眠る。 昼過ぎに、目を覚ますと、テーブルの上に、五目寿司や、揚げ物など いろいろな料理が置かれていた。 四人を、起こさない様にと、そっと、三婆が、置いてくれていた物だった。 顔を洗ってきた四人は、一斉に料理にかぶりつく。 「旨~い!!」「野菜の天ぷら、最高!!」「五目ずし、大好き!!」 「、、、、」玉翠は、言葉もなく、次々に頬ばる。 「あ~食った食った」山のように有った料理は、全て、四人の胃袋に収まった
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