決戦

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「グワァ~ッ」心臓を突かれたガバラは、苦しげに吠え 身体を折り曲げて、痛みに耐える。 「今だっ」譲と快哉が、その後ろから、武器で襲い掛かる。 だが、その直前に、ガバラは大きく羽ばたいて、遠くへ飛んだ。 「くそっ、もう一歩だったのに」快哉が、悔しそうに言う。 「あの大きな翼が、邪魔だな」譲はそう言って「次は、翼を狙おう」と言った 「よし、まず右を狙うぞ」「了解!!」 ガバラが、いくら遠くへ逃げても、四人は、筋斗雲ですぐ追いつけるが ガバラの炎を避けるため、少し距離を置いて、取り囲む。 聖は、髪の毛を三本抜いて、息を吹きかけ、自分の分身を、三体作り ガバラの周りを、ぐるぐる回り始めた。 快哉と譲は、ガバラの隙を窺っている。 どれが本物の聖か、分から無くなったガバラは 滅多やたらに、金棒を振り回す、すると、一体に当たった。 「やったか?」だが、それは本物では無かった「くそっ」 悔しがるガバラの後ろから、譲と快哉が翼を狙って、武器を叩き込む。 ガバラの右の翼は、中ほどから、ぽっきり折れてしまった。 片翼になり、バランスを失ったガバラの右手が、聖の如意棒で強打された。 「うぅっ」びりびりと痺れる右手から、重い金棒が滑り落ちた。 火を吐く魔力も、全て使い果たし、片翼で、旨く飛べず 武器も失ったガバラに、三人は襲い掛かり それでも、暴れまわるガバラを、何とか取り押さえた。 直ぐに玉翠が、絡めの綱で縛り上げる。 そこへ「おお、うまく捕まえた様じゃな」と、現れたのは、悟空だった。 「祖父ちゃん!!」「悟空さん!!」皆は、驚きの声を上げる。 「何だよ、祖父ちゃん、もう少し早く来てくれたら、もっと楽勝だったのに」 聖は、そう言ったが「わしも、忙しかったんじゃ、何しろ、こ奴が 地界の門番を倒したんでな、他の獣魔たちも外に出てしまって 天界や、中界で、暴れまわっていたんじゃ」 「祖父ちゃんの用って、それだったの?」 「そうじゃよ、まぁ、わしが直ぐに、取り押さえたがな」 「直ぐにって、あれから何か月も、、あ、天界の一日は ここの一年だったね」「そう言う事、どれ、こ奴は、わしが 天界へ連れて行こう」「あ、もう一匹、ギグルって言うのが居るんだけど」 「そうか、どこに居る?」「きっと、あの島だよね」 ガバラを自分の筋斗雲で引いて、孫悟空は、その島に向かった。 皆は、元に戻した猪と鹿を袋に入れてて担ぎ、島に着くと放してやった。 ぽっかり空いた洞窟の底に、ギグルが、死んだように横たわっている。 玉翠が「こいつは、体力も気力も使い果たして、屍と一緒だ」と言い 「ほら、これで少しは、ましになるぞ」と、薬を飲ませた。 少し元気になったギグルは「申し訳ありません」と、素直に、両手を差し出す するとガバラが「そいつは、俺に脅されて、やっただけだ、そいつには 何の罪も無い」と、思いがけない事を言った。 「おや、こいつを庇い立てするなんて、そんな殊勝な気持ちも 持っていたのか」玉翠が、驚いた口調で言う。 「ギグルに、罪が有るか無いかは、天帝様が決める、さ、行こうか」 悟空は、そう言うと二人を引き立て「聖、達者でな」と、言った。 「悟空様、私は、もう少し下界で暮らします。 そう薬師如来様にお伝え下さい」玉翠も、思いがけない事を言う。 「そうか、この騒動を鎮めた功績で、それも許されるだろう」 悟空はそう言うと「皆、達者でな~」と、あっという間に消えて行った。 それを見送り「何だか、気が抜けちゃった」聖が、ポツンと言う。
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