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「あれ?大翔、今日は仕事で、お休みするんじゃなかったの?」
聖と、玉翠がそう聞くと「頼まれた仕事は、此処でも出来る仕事だったんだ」
大翔はそう言うと、持って来たパソコンを、これも持って来た
折り畳みのテーブルの上に設置して、花見の時に持って来た椅子に座ると
「警察の広報誌に載せる、原稿を書くんだ」と、パソコンに向かう。
「あれ?大翔さん、帰って来たんだろ?」恭弥が、聖と玉翠に聞くと
「ケーサツのコーホーの、ゲンコーを、書いてるんだって」と、玉翠が言う。
「へ~凄いな~大翔さん、じゃ、邪魔しない様に、静かにしていないとな」
「でも、人手が要る時は、いつでも呼んでくれって言ってたよ」と、聖が言う
「そうか、でも、今の所、人手は十分だよな」と、譲と快哉が言うと
「ああ、ゆっくり、自分の仕事をしてくれって、言ってくれ」恭弥も
固まった、コンクリートの土台の型枠を外しながら言う。
三時のお茶の時間になり、皆は、仕事の手を止めて
美味しい揚げ餅と、お茶を楽しむ。
「大翔、進んでる?」聖が聞くと「それが、なかなか、進まなくてな~」
大翔は、旨そうに、揚げ餅に海苔を巻いて食べながら言う。
「こっちの人手は、十分ですから、気にしないで、ゆっくり書いて下さい」
譲がそう言うと「筆も無いのに、あんな物で、本当に文章が作れるのか?」
揚げ餅に、黒蜜と黄な粉をまぶして食べながら、玉翠が言う。
「玉翠にも、そのうち分かるようになるさ」譲は、玉翠の口に付いた
黄な粉を、拭いてやろうと、おしぼりを手に持って言う。
「また、子ども扱いして」「子供だろ?口の周り、黄な粉でべっとりだぞ」
「えっ」玉翠は、慌てて、譲の手から、おしぼりを取ると
ごしごしと、自分の口を拭いた。
お茶を楽しんだ後、大翔は、またパソコンの前に座り、師岡や亜香里
西條たちから送られてくる情報を、分析していたが、目立った動きは無かった
『また由紀が、この村に来て、俺が居る事を確認してから
事を起こすに違いない』大翔は、そう思っていた、だから、村に戻ったのだ。
それから三日、【勝山先生をしのぶ会】も、何事も無く過ぎた。
「動きが無いですね~今度使う、爆弾を製造しているのでしょうか?」
西條が聞く「いや、今度は、爆弾は使わないと思う」「何故です?」
「爆弾だと、確実に、ターゲットを仕留められないだろ?」
「そうですね、あの時は、たまたま長官本人が、箱を開けましたが
もしかしたら、奥様や、お手伝いさんが、開けていたかも、、」
「そう言う事だ」「と、言う事は、、」「次は、銃撃だろうな」「銃、、、」
「亜香里に頼んでいた物が有る、受け取りに行ってくれ」「分かりました」
西條は、亜香里に連絡し、指定された場所で待っていると
「ちわ~頼まれていた物です」と、現れたのは、誠也だった。
「ご苦労様、これかい?」「はい」誠也は、肩に掛けていたスポーツバックを
西條に渡す「有難う、亜香里さんに宜しく」「へ~い」
誠也は、直ぐに姿を消し、西條は、見かけより重いバックを、肩に掛けた。
そして「誠也も、すっかり大人しくなったな~」と、呟く。
誠也は、まだ十代の頃、悪い事をする大人が大嫌いで
そんな大人をぶちのめして、暴れまくっていた。
困った誠也の両親は、遠い親戚になる警視庁長官の、戸田厳登に泣きついた。
厳登は、誠也に、自分の娘の亜香里の、世話係を命じた。
「世話係って、何をするんだ、亜香里姉は、もう大人じゃないか」
誠也は、亜香里には一目置いていて、姉でも無いのに、亜香里姉と呼んでいた
「炊事、洗濯、掃除、お使い、何でも、言われた事をすれば良いんだ」
「うっへ~、本当の世話係かよ」厳登の前では、ぶつぶつ言っていたが
部屋を出ると「やった~亜香里姉と一緒に住める」と、飛び上がって喜んだ。
警視庁長官の戸田厳登は、亜香里の父で、大翔と美海の伯父だったのだ。
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