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孫の名は聖
東京に有る、55階建てのタワーマンションの最上階で
二人の若い男が、三時のお茶タイムに、珈琲を飲んでいた。
「今日、来る筈なんだが、来ないな」そう言ったのは
上品な顔立ちの、いわゆるイケメンと呼ばれる男だった。
「手違いで、明日になったのかも知れないな」そう答えたのは
こちらも真面目そうな、イケメンである。
その時、ベランダの方を向いていた、真面目そうな男が
「あ、誰だ?」と、指差した、振り返って見た、もう一人の男は
「?女?」と、首を傾げる「今日は来れないと言う、使いかな?」
そう言いながら、立ち上がって、窓の傍に行った男が、掃き出し窓を開けると
その女は「猪八戒と、沙悟浄の孫と言うのは、お前達か?」と
おっそろしく、ぶっきらぼうな言葉を吐く。
「そうだが、お前は?」「聞いていないのか?私が今日来ると言う事を」
「聞いているのは、悟空さんの孫が来ると言う事だけだ」
「何だ、知っていたのか、私が、その孫だ」「えっ?」「ええっ~」
二人は、驚き《女じゃ無いか》と、同時に言う。
「そうだ、女だ、悪いか」「わ、悪くは無いけど、、」
「てっきり、男だと思っていたので、、」二人は、まだ驚いていたが
「とにかく、中へ」と、女と言うより、女の子と言った方が良い
まだ、あどけなさの残る悟空の孫を、部屋に招き入れた。
女の子は、そのまま、ずかずかと入る「あ、履物、履き物は脱いでっ」
真面目イケメンが、女の子を押しとどめて、履き物を脱がせ
もう一人が、スリッパを持って来て「これを履いて」と、足元に置く。
「何だ、下界と言うのは、面倒な事をするんだな」
そう言いながらも、女の子は、スリッパを履く。
「丁度、お茶をしていた所です、一緒にどうぞ」そう言って
ソファーに座らせた男は、キッチンに行って、珈琲を淹れて
もう一人は、女の子が脱いだ靴を、玄関の横のシューズボックスに
消臭剤入りのスプレーを、シュッと振ってから、入れて来る。
女の子は、出された珈琲を一口飲んで「苦いっ」と、顔をしかめた。
「ブラックは、まだ無理でしたか」珈琲を作って来た男は
砂糖と牛乳をたっぷり入れて、カフェオレにし「これなら」と、言う。
「うん、これなら飲める」女の子は、そう言って、一気に飲み干した。
《喉が渇いていたのかな》二人は、また同時にそう思った。
「ところで、三代目のお名前は?」真面目イケメンが聞く。
「私は、三代目孫悟空聖だ」「聖、良い名前ですね」そう言ったイケメンに
「お前は、三代目沙悟浄か?」と、聖が聞く。
「そうですが、この下界では、沙悟浄と名乗る訳には行かず
ここで暮らす為の名前を作っています、佐川譲、譲と呼んで下さい」
「私は、猪野快哉と、名乗っています」と、猪八戒の孫が言う。
「ジョーと、カイヤか、じゃ、私は、何と名乗れば良い?」
「そうですね~」二人は暫く考えていたが「そのままで良いと思います」
「そのままで?」「はい、有名な企業の社長の名前も、孫ですし
聖と言う名前も、ざらに有りますから」譲が、そう言った。
「では、私は、孫聖と名乗れば良いのだな」「はい」二人は頷き
「便宜上、聖さんは、私達の従兄弟と言う事になります」と、言う。
「従妹?」「そうです、苗字が孫なので、中国の田舎から来た従兄弟ですね
そうすれば、何も分からなくても、うまく誤魔化せると思います」
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