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彼女の名前は木下朝子。今年で30歳になる独身アラサー女だ。恋愛なんて面倒くさいと、朝子はずっとそれを遠ざけてきた。
ところが昨年の秋、朝子は久しぶりに忘れかけていた恋心を取り戻したのである。何年ぶりかに感じた胸の高鳴り、恋のトキメキ。ひとりでいいと思っていた朝子の心に恋の種が芽吹いた瞬間だった。
何度かデートにも誘い、うまく関係を育んではいるが、なかなか告白に辿りつけず現在に至る。あと少し。あと一押しなのだ。
だが、それを失敗してしまったら今までの苦労はすべて水の泡。朝子はどうしても、この恋を成就させたかった。
だから、願かけをしたのだ。29歳にもなって恋の願かけなど子どもっぽいとは思ったのだが、自分の名前が朝子だったことから運命的なものを感じずにはいられなかったのだ。
それが、朝顔である。
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