炉心

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炉心

炉心 ワンルームで燻る炉心 此処が私の全て  すべからく連ねればならぬ詩は遂に死して 武器に見立てていたペンは潰れ もたげていた自尊心も最早臥して() 日常に埋没し千年 拡張した自意識は麻痺して加速する 首に光る鎖は鳶色(とびいろ)のタイ 有体に言えば社畜で 羽織る背広は草臥れた(くたび)背中に馴染んで 減速する表現欲に焦って 減退する空想欲に憤って なお変われぬ自身の矮小さに嗤って 廃炉した炉心に 最早火は灯らない 乖離した理想は 最早現実に届かない あの日買った詩集は埃を着て山となった あれはきっと墓場だ 饐えた()ような古本の香り   それはきっと死臭だ  いつの間にか死んだ夢の死臭だ 蛆がわく前に燃やさねばならぬが あの日描いた詩集が 誇りとなり山となった詩集が 稚拙ゆえ赤面呼ぶあの日の希望が 廃炉した炉心に 日の絶えた炉心に 僅か残る火種だ デスクトップに今打つのは  今紡ぐとるに足らぬワードは 夢破れた私が放つ誇り高き炉心だ
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