5人が本棚に入れています
本棚に追加
炉心
炉心
ワンルームで燻る炉心
此処が私の全て
すべからく連ねればならぬ詩は遂に死して
武器に見立てていたペンは潰れ もたげていた自尊心も最早臥して
日常に埋没し千年 拡張した自意識は麻痺して加速する
首に光る鎖は鳶色のタイ 有体に言えば社畜で
羽織る背広は草臥れた背中に馴染んで
減速する表現欲に焦って 減退する空想欲に憤って
なお変われぬ自身の矮小さに嗤って
廃炉した炉心に 最早火は灯らない
乖離した理想は 最早現実に届かない
あの日買った詩集は埃を着て山となった
あれはきっと墓場だ 饐えたような古本の香り それはきっと死臭だ
いつの間にか死んだ夢の死臭だ
蛆がわく前に燃やさねばならぬが
あの日描いた詩集が 誇りとなり山となった詩集が
稚拙ゆえ赤面呼ぶあの日の希望が
廃炉した炉心に 日の絶えた炉心に 僅か残る火種だ
デスクトップに今打つのは
今紡ぐとるに足らぬワードは
夢破れた私が放つ誇り高き炉心だ
最初のコメントを投稿しよう!