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音色が夜空に響く。
優しい風に乗って、
どこまでも、
どこまでも、
響いていく。
私は、みんなへの想いを込めて吹きながら、昔のことを思い出した。
× × ×
小学生の頃、駅前でお母さんと聞いた「サリーガーデン」そして、お母さんの涙。
お母さんの涙の意味を、あの時はまだ分からなかったけど、オーボエの音色が、私たちを包みこんでくれたことで、悲しみの重りが少し溶けた気がした。
私も、何もできないけど、みんなの心を楽にできれば、少しでも、みんなの力になれれば。ずっと、そう思ってる。
お母さん。
ありがとう。
私、ちゃんと知ってるから。
お母さんが作業服姿で障子の張り替えをしている。小学生の私は物陰から見つめている。一瞬、お母さんの姿に、お父さんの姿が重なる。が、すぐまたお母さんの姿に戻る。一人、作業場で一生懸命仕事をするお母さんの姿。額の汗をぬぐい、黙々と仕事をこなしていく。
やがてお母さんは、物陰の私に気づき、手を止めて、ニコッと微笑んだ。
「ありがとう、お母さん」
× × ×
オーボエの音色が想いを乗せ、夜空を超えて広がっていく。
「サリーガーデン」の素朴なメロディーに合わせ、その音は、やがて語りかけるように、優しく響く。
× × ×
おばあちゃん、
ありがとう。
いつも私の味方でいてくれて。
小さい園児ぐらいの私が、元気なおばあちゃんに手を繋がれて、いろんなところに遊びに行っている。
公園や動物園、遊園地、デパートや、映画……
やがて、私は大きくなり、おばあちゃんは背が丸く、小さくなった。
そんな、おばあちゃんが、作業場のなか、金槌片手にニコッと笑いかける。
作業場の前、花火大会に行くのを躊躇していた私の背中を押すおばあちゃんがいる。
「ありがとう、おばあちゃん」
× × ×
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