あの白い雲を君は追いかけていった

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「ほ~ら!何してるの。皆、続き描いてね」 私の顔が耳まで真っ赤になる前に、川口先生の一声で皆視線をキャンバスに戻す。 川口先生は座ってマグカップに入ったコーヒーを一口飲んだ。 私も喉の渇きを感じて坂井君がくれた缶ジュースを開けようとしたが、 また揶揄われると嫌だと思い、持参している魔法瓶のお茶を取り出して飲んだ。 ため息を一つついて、筆を持つ。  私は今、桜の木を描いている。以前に吉野山で見た桜の木を思い出しながら・・・。  吉野山の桜は、ここ奈良の地元民にとっても見に行くのは一苦労だ。 中学1年生の春、学年で吉野山に写生会に行った。 バスだったが、学校からは2時間ほどかかり、帰りのバスで皆、疲れ切っていたのを覚えている。 まだ満開になる前だったが、人も多く先生たちもその事は予想していなかったようだった。身動きがとりづらい。とりあえず下描きは完成させ色を塗るのは学校で、という事になった。
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