あの白い雲を君は追いかけていった

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「あっちの方が良く見えるよ!」 「あそこで描こうよ~」 私は小学校卒業までを札幌で過ごしていた。思いがけず中学からを奈良で過ごすことになった私は、周りに友人など当然おらず、よそ者扱いされるだろうかと毎日怯えていたように思う。 親の仕事の都合といえども、それまでの友人と離れるのはやはり寂しかった。 写生会の日も、一人で行動していた。 周りは友人同士で移動していた中、私は一人でいる事を生かし、良いアングルを見つけようとあちこち歩き回っていた。商店でお土産を買う余裕もなく、持った来たおにぎりもただ胃に物を入れるという感覚で食べ終えた。 ここだ、と見つけた場所は、緑木に囲まれた薄いピンク色というよりも白に近い桜が集中して咲いているのが遠くに見える所で、そこを選んだ生徒もあまり居ないようだった。 私は立ったままで首にかけたキャンバスに鉛筆を走らせていく。 描いているとたまに後ろから「あら、お嬢さん良い所見つけたわね。上手だね~」「頑張ってね」などと声をかけられていた。
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