巫(かんなぎ)の少女

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巫(かんなぎ)の少女

私は巫。ここで働く巫。 アフリカとかで言うシャーマン。 私にはチカラがある。霊を観るチカラが。 人間に最も身近な存在である霊的異物って何だと思う?それは付喪神(つくもがみ)だよ。 私は嫌いだ。この忌々しい存在が。 私は嫌いだ。人間を脅かすお前が。 私は嫌いだ。巫が、この私が…。 私は嫌いだ。この世の理ことわりから外れたお前たちが。 だから。だからだからだから… この日記を書こうと思う。消えそうな付喪神と、そのもちぬしを追った日記だ。 いや、記録手帳と呼ぶべきか。 だが、一応のため日記と記そう。 今回追ったのはパスケースの付喪神と、もちぬしのるいさん。 付喪神とるいさんはお互いを信頼して愛し合い、育っていた。 けど、るいさんは最愛の「人間」を見つけたから付喪神を捨てた。 捨てられた付喪神は付喪神で、るいちゃんが幸せならそれで良いって感じで消えるし… ほんと、追ってきた私の身にもなってくれない?って言いたいとこだけど、消えかけ付喪神を追いたい私には好都合ってワケ。 でもこれじゃ、私が悪役みたいね、そうだ、この日記は付喪神って存在を広めるためのものだと偽りましょうか…ええ、そうしましょ、それがいいわね! てな具合で、るいさんとその付喪神には説明してこの日記の1ページ目ができたってわけ。 次は誰を追いましょうねぇ…?もうすぐ消えそうな付喪神、そうねぇ?この日記を読む君たちもどーせ好きでしょ?…そう、その存在は必ず物語には付き物。いいえ、彼女を追うのはもう少し後。今はそうね、るいさんの兄でも追ってようかしらね?たしか、キーボード。 じゃあそうしましょ、そうするべきね。 さよなら、キーボードの付喪神。 さよなら、人間をおびやかす付喪神。 さよなら、巫のチカラ、今の私。 さよなら、此の世の理から外れた付喪神。 巫の力が私を巡る、一部の巫のチカラが抜けて消えるのを感じる。 このチカラが無くなれば私もきっと元の清い存在になれる。 あんな忌々しいモノを見なくて済む。 あぁ、付喪神。お前は何故、存在いきて、何故、姿を表す。 何故その姿を私に晒す。裏切ったのはお前たちだろう? 私から、恋人も、家族も…仲良しも!奪ったのはお前。 だから罰せられるべきなのはお前たち。 だから消えそうな付喪神を追って日記に記す。 消えそうな付喪神はキーボードの付喪神のようにチカラを操り消す。 そうして付喪神たちの贖罪、この彼らの生命いのちを生贄にした贖罪が完成するのだ。 ふふ、私は悪役なんかじゃ無い、正義の味方。るいさんも、付喪神に騙されていたから救った、それだけなのよ。 …決して、悪役なんかじゃ、ないわ。 この日記を読む人には危害を加えない。付喪神の恐ろしさを伝え、広めてくれるなら私は大歓迎だわ。 ……だから、もう少し付き合って頂戴、あなたには、不利益なんかにならない、させない。 古いにしえから伝わる巫のチカラで、あなたが死んだその時に、幸せの楽園へ導くから。 だから見てて頂戴。付喪神の贖罪を。悲しい私の物語を。
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