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あなたの宝物
るい、という名の少女。
彼女の宝物は翠彩みどりいろのパスケース。
そのパスケースには宿るモノがある。それは付喪神つくもがみと呼ばれる、とてもとても「ちいさな神様」…「ちいさないのち」
翠彩のパスケースの付喪神はお兄ちゃんが1人、いる。
…とはいえどもお兄ちゃんみたいなお姉ちゃんなのだ。姉を兄だと思い親しくしていたのは、ただの彼女の勘違い。
と同時に少し納得もいった。
髪の毛ベリーショートだし。胸、無いし。
そのお姉ちゃんはキーボードの付喪神だった。過去形なのは私のせい。
この日記が完成したこの今はただ、ただ、後悔だけが募っていた。あの、あの頃にただ、あの時の私に、一言でも伝えることが出来たなら。
あなたが信じてる、その神様を信じるな。
付喪神を、私の筆の付喪神を信じて。
そう言いたい。二言あるけど…。
そもそもそのパスケースの子の勘違いを何故知っていたのか。
日記を作るにあたって、何故るい、悠輝の兄妹を狙ったのか、それは…。
昔から彼女たちを知っていた。
羨ましいと、そう思っていた。
だって、だって、付喪神と仲が良くて。
羨ましい、一心同体かのように、意思疎通していて…羨ましい。妬ましい。
その心が隙を…作ったんだと思う。
魔が刺す原因になったんだと思う。
彼女たちは私を…多分知らない。
でも、私は知っている。
この境内から。河川敷から。
見えていた、遊んでいるあなたたちの事。
習い事に明け暮れ、きょうだいも…誰もいない中でふと、目にする時があった。
羨ましい。だから単純にあなた達の邪魔をしたかったのかもしれない。その為に付喪神を裏切ってしまった。
私は私の贖罪が必要だ。
付喪神などではなく、私の。
………
ああ、生きる意味なんて。
私には無いのかしら?…
生きたい。
生きたい。いきたい
死にたく無い
しにたくない
でも、贖罪の為には…私の過ちを正す為には…
…こう、するしかないの。
ごめんね、大切な宝物。
ごめんね、私の付喪神。
ごめんね、るいちゃん、悠輝くん。
ごめんね、あなたの宝物…。
さようなら。
今からはもう…遅いんだ。後戻りできない。するには遅すぎた。
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