やっと、ままにあえたね

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やっと、ままにあえたね

わたしはもうすぐうまれる。もうすぐ、もうすぐ、ままに会えるんだ。はやくままに会いたいな。 わたしは早くままに会えるのを楽しみにうまれる為の準備をしています。いますぐにでもいいんだけれど、もう少しまっていてほしいから、わたしたちはその存在に気づいてもらうには「ちいさないのち」 けれど見えていないだけでほら、貴方にもいる、そのいのち。わたしがままの元へ行くための準備をしているあいだに、キミには、この日記を読んでるキミには、お兄ちゃんがうまれたときの様子をみせるよ。 ままのお兄ちゃん、それが今回のもちぬしさん。だからわたしのお兄ちゃんにもなるんだね。お兄ちゃんはキーボード。ままのお兄ちゃんが大切にしてるキーボード。 昔、その昔、ままのお兄ちゃんが5歳のころ、お誕生日にもらった、キーボード。ままのお兄ちゃんは今年20歳になるんだけどね、今でも大切にしてるんだ。この子供用の音の鳴らなくなってしまったおもちゃのキーボード。ままもそのキーボードで遊んだ事があるって言ってたけど、あまりおぼえてないみたい。そんなキーボードがわたしのお兄ちゃん、大好きなお兄ちゃん、お兄ちゃんがうまれたとき、その時はキーボードの音が鳴らなくなったその瞬間。 音が鳴らなくなったって、ままのお兄ちゃんはそのキーボードをもちつづけた。そもそも音の鳴らないキーボードって、楽器としてダメダメだよね。そのせいなのかお兄ちゃんもダメダメな時がある。でも、ままのお兄ちゃんを支えていただけあって、お兄ちゃんは強いんだ。そんなお兄ちゃんを私は大好きです。ままと同じくらいに。はやくままに会いたい。 ーねぇ、キーボードちゃん、君は音が鳴らなくたってずっと『なかよし』だよ?ー お兄ちゃんはままのお兄ちゃんのこの言葉に涙を流した。そこからこの2人は、時々、たまに、ほんの少し、ちょっぴりだけ、意思疎通ができるようになりました。 そう、自分が大切にしてたキーボードに「ちいさないのち」が宿っていた事に気が付いたのです。ままと私もこんな風になれたらいいな。さぁ、うまれる準備ができました。会いに行こう、ままに。はじめまして、まま! ー私はパスケースのつくもがみー もちぬしの名前はるい。 るいちゃんは遠くに出かけるのが好きだから、パスケースの私も大事に大事に扱ってくれたんだね。バスに乗る時、電車に乗る時、ピッてすると私の中のカードにあるICチップが動く。すると私の心もゆれ動いて私を使ってくれてると、少し心が温まってきもちいい。るいちゃんと出会い会うことが出来たのは彼女が中学生の時。そこからは高校に上がっても毎日いっしょ。登塾する時もそう。 こころ、ゆれうごく。 でも学校でも塾でも旅行でも、ずっと一緒だったけど、仕事を見つけて暫くしてから忙しくなって旅行へ行かなくなりました。 恋人と結婚して、子どもができて、本当のママになったんだ。私のこころはゆれ動く、不安、ふわふわふあん、安心の中で不安。 でもでもままは、その旦那さんと幸せいっぱい。だからやっぱり安心です。これからも、ままを、いいえ、るいちゃんをしあわせにしてあげてね。彼女は照れ屋だから言わないけど、本当はいっぱいかまって欲しいと思ってるの。心から愛しているの。私がままを好きなように。 ままの中からは「パスケースの私」は消えていってる。だから私も消えゆく。 私のこと、無くしてしまうのかな。捨ててしまうのかな。けど、けどけど忘れないで私はずっとそばで、るいちゃんを見守っています。るいちゃん、今までありがとう。 さようなら。 つくもがみは大切なものの愛のあかし。 証だから、見えなくてもそばにいる。この日記は沢山の人の心。あなたの物語もあるかもしれない…それではまた会える日を願って。 ……またね、るいちゃん
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