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「花ちゃん、昨日はごめん。実はさ、オレも花ちゃんとおんなじかもしれない。オレの残像もさ、なんとなくなやつでさ、ぼうっとしていて、みんなの言っている難しいことがわかんなくてさ。みんなはオレを“置いてけぼり”ってカゲで言い合って笑うけれどよう。あいつらの残像はただのずらっと列んだ言葉だけだから、花ちゃんみたいにきれいな絵でもないし、咲ちゃんみたいにかわいい踊りでもないし、オレみたいにおもしろい歌でもないんだよ。オレの残像はメロディでさ、それを鼻歌で鳴らしたら、オレの親父が調べてくれて。ああ、親父は世界博物館の学芸員だからね。そうしたら、どうやらその歌は、オレの名前の漢字と同じ大樹のことを歌った童謡らしい。だから花ちゃんの残像と同じなんだ。それをクラスの子に言ったら、とてもバカにされちゃった。でもそれと同じことを花ちゃんにしてしまったオレは、ほんとバカだよな。」
それまで大樹くんがわたしと同じような苦しみを持って生まれてきたなんて知らなかった。昨日はたしかにとても悲しかったけれど、わたしが逆の立場だったら大樹くんになんて言ってたか。わたしはそれからというもの、大樹くんと咲ちゃんのふたりとよりなかよくなれた気がした。
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