53.ユニオンルール

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53.ユニオンルール

「のやろうッ! なめやがって……!」 「ぶっ殺す‼」 「上等だゴルァッ‼」  ――何人かが鉄パイプを握りしめ、嵐にとびかかってくるのが見えた。  一匹、二匹、三匹……と、素早く位置を確認するようにリズミカルに視線を飛ばした嵐は、タオルで保護された腕を突き出して一本目の鉄パイプを受け止め、さらに飛んできたもう一本の鉄パイプはスパァンッと蹴り上げて躱す。 「なっ!」  そしてさらなる三本目は、掴み返していた一匹目の鉄パイプを力技でひねり返し、鉄パイプを握りしめたままの一匹目もろとも、三匹目の刺客に向かってブォンッッとぶん投げたではないか。 「るぁっ‼‼」 「うおっ⁉」 「ッッ⁉」  大の男が勢いよくふっ飛び、一匹目と三匹目が派手に衝突。そのまま二人はもつれあうように仲良く床を転がった。 「次はどいつだゴルァッ⁉︎」 「このッ!」  煽るような嵐の雄叫びに、さらに数人が飛びかかって行ったが、攻撃を受け止めては投げ飛ばし、ひらりひらりと躱しては弄んだ敵二体の頭を両手でふん捕まえてごっつんこ。相討ちにさせてノックダウン。  再び敵にわらわらと囲まれるとダッと駆け出し、タンタンっとリズミカルに床とテーブルと壁をクロスして、ぶわっと舞ったかと思えばアクロバティックな蹴りが追っ手の群れに炸裂する――。 「くっ‼」 「ッくそ!」 「……」  私、マジでポッカーンって感じ。  いつも思うけれど……マジで嵐、あり得ないスピードと馬鹿力‼‼  決して周りのユニオンの奴らが弱いわけじゃない。  嵐が、アホみたいに強すぎるのだ――! 「あんだ? またモグリか?」 「おいおいおいおい。ユニオンともあろう者が赤頭一匹になに手こずってんだよ!」 「い、いや……。あの赤頭、なんかめちゃくちゃ強ぇぞ……」 「一人で乗り込んでくるたぁキョースケさんの時以来の刺客だなマジで」 「おもしろそーじゃん、俺らも混ぜろや‼」  その後も、血湧き肉躍るといった感じでわんさか人が集まり、次々と嵐に襲い掛かるユニオンのメンバーたち。  しかし嵐は、いつになく本気の野生パワーをフルで解放しているようで、圧倒的なスピードと力で、目の前に立ちはだかる敵を一匹残らず薙ぎ倒していく。  二人、三人……五人…………十人と。
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