53.ユニオンルール

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『黒い影』はフードの下の鋭い眼で嵐を見下ろし、黒いマスクで覆われた口元を微かに動かす。 「ほざけ。貴様、人の庭で何勝手に暴れてやがる」  低く、窘めるような声でそう呟く黒い影――キング・エイジ。 (う、ウワアアアアアアアアア……!)  それラスボス、ラスボスだからァァァァァ‼︎ と、あわあわしながら八割がた白目をむきかける私。  当然、キングに加勢しようと周りのユニオンメンバーたちが一斉に嵐に飛びかかろうとしたけれど、キングは鋭い眼差しで周囲を一瞥し「余計な手出しすんじゃねぇ!」と一喝。仲間たちを黙殺している。  しかしそんな温情などには目もくれず、嵐は初めて対面する黒尽くめの男にマイペースに問う。 「おい、無視すんじゃねぇ。俺は『椋島』の御蔵嵐だ。テメェ、どこの所属かって聞いてんだよ」 「……んなもんねぇ」 「あん⁉︎ なんかあんだろ。ねぇならねぇで、とりあえず名乗っとけ。それがここでのルールらしいからな」  じわじわとエイジの拳を押し返しながら、覚えたてのユニオンルールをキング・エイジ相手に堂々と指南する嵐。 「……」 「おら、名前」 「……」 「……?」 「エイジ」  しばし怖い顔で嵐を睨み下ろしていたキングだったが、さらにギリギリと拳をめり込ませながらも、律儀に名前を答えてる件。  その返答に、嵐は奥歯を噛み締めて拳を食い止めながらも、さらにぽつりと付け加えた。 「苗字……」  なに聞いてんだよ。 「……高杉」  キング、お前もなに答えてんだよ……!  周りのユニオンの奴ら、拳の張り合いというか、力比べをしている嵐とキングの二人を見たままポカンとしちゃってるし。  いや、ポカンとしてる場合じゃねぇ! 「ちょ、あっ、嵐っ……! その人は、ここのキングで……」  慌てて輪の中心に向かって飛び出し、しどろもどろになりながら二人の間に乱入しようと思った……のだが。
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