13人が本棚に入れています
本棚に追加
――私は結局あの後、嵐の部屋で、すべてを嵐に話した。
高島先生がこれまでに抱えていた秘密……彼女が京介を突き放した本当の理由や、京介のためを想ってついた残酷な嘘、また、本当は彼女自身が誰よりも悲しみ苦しんでいたという事実を全て包み隠さず伝え、
高島先生が結婚式を挙げて椋島を去る前に、もう一度だけでいいから、彼女と京介の二人を引き合わせて、お互いのためにも心ゆくまで話し合いをしてもらいたいと思っている旨を伝えた。
そして、口止めされていたから喋る事ができなかったが、実は私自身が密かに京介と連絡を取り合っていたことと、また、居場所を知っていることもあわせて伝え、昨晩、たまたま秘密を知られてしまった楓と一緒にブラキンに押しかけて説得を試みたけれど失敗に終わったことも申し添えた。
(なお、リクは空気を読んでか、ジュースを買いに一時的に外へ出ていたが、ブラキンの話をしている頃に部屋に戻ってきたので、この辺りから彼も会話に加わる形になった)
『黙ってて本当にごめん。できる範囲でここまで色々頑張ってみたけれど、でも……どうしてもこの先は、嵐の力が必要なの』
そう心から頭を下げると、
『てめぇ……京介の居場所知ってるって……なんで黙ってやがった!』
そう憤って暴れかけた(結局嵐に押さえつけられて黙殺されてたけど)リクと違って、高島先生と確執のあった嵐は、やや長い事、何も言わずにジッと考え込むように黙り込んでいた。
唯一、京介から高島先生との関係を知らされていた嵐。
京介と同様に、長らく高島先生のことを恨み続けていた嵐にとっても、この事実は青天の霹靂だったと思う。
嵐はしばらく複雑な表情を浮かべて思い悩んでいたが……やがて。
『よく、話してくれたな』と。
ただ一言そう呟いて、私の頭をポンと撫でると、あとはもう何も言わずに、すぐさま出立の準備に取り掛かってくれた。
果たして真実を知った嵐が、高島先生のことをどう思ったかはわからない。
けれど、今、京介と高島先生を引き合わせることが、彼らの人生にとって最も重要なことだと、そう共感してくれたからこそ、腰を上げてくれたのは確かだと思う。
尚も息巻くリクが一緒に押しかけようとしていたが、嵐は強固とした声色で『行くのは俺と架乃だけでいい。他の奴らにもまだ言うな』と、京介の心情にも配慮してくれたおかげで、結局、今こうして、私と嵐が二人でブラキンに向かうこととなったのだったが――。
最初のコメントを投稿しよう!