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――回想から現実に心を戻すと、視線を嵐から目の前の廃墟のようなビルに移す。
エルに聞いていた話によると、BLACK UNIONはいくつもの暴走族やチームが統廃合して一つの組織となっているので、全てのメンバーが顔をそろえると軽く七、八百人を超える(末端の傘下まで入れると実に千人近い)規模の不良集団になるらしい。
さすがに全員が一度に集まることはほとんどないようだけれど、エイジの一声でそれだけの人数が関東のありとあらゆる場所で動き出すらしく、二人対七、八百人じゃ、あまりにも多勢に無勢すぎる気もして少々不安になる。
(まぁ、かといって威勢の良いリクを連れてきて三対七、八百人になったところで、大差はないのだけれども)
「昨日はたまたま大事に至らなかったけど……一応、ここは関東最強の不良集団が屯う住処らしいから、くれぐれも気を付けないとだよ」
「ああ、わかっている」
嵐は頭に巻いていたタオルを巻きなおすと、腕をぐるぐるとまわして心づもりを始めた。
一体、どうやって京介を説得するつもりなのだろう。
それはわからないけれど、嵐がいればきっと大丈夫だよね……と、私は今一度、大きく深呼吸して、キッと前を向く。
「行こう」
「ああ」
華奢なヒールを地下一階に向けて差し出すと、嵐もそれに倣うようにして足を差し出す。
ところどころ剥げているコンクリートに覆われた細い階段をひたすら下に降りる。黒々しい重厚な扉が見えてくると、嵐はそれを両手で開け放った。
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