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すると、近くにいた、黒マスクに同じ特攻服を着た金髪のツンツンヘアーが、なんだなんだとこちらにやってきて、
「あれビキちん。ナンパとか珍しいじゃん……って、ん? その娘、確か昨日ここに来てたキョースケさんの……」
と、見知らぬツンツンヘアーの黒マスクが見覚えがあることをアピールしてくれようとした時のことだった。
――シュッと物凄い速さで飛んできた、青メッシュ男の強烈な後ろ蹴り。
嵐の鳩尾を目掛けて飛んできたソレは、あわや、鳩尾の一歩手前で嵐の鍛えられた片腕に弾かれる。
「……っ⁉」
「っぶねぇなテメェ!」
強烈な後ろ蹴りも見事なものだったけれど、一枚上手だった嵐の素早い身のこなしに、青メッシュの男は少々驚いているようだった。
「てめぇ、マグレにしちゃよくこの俺様の蹴りを躱せたな? っつうかマジでドコの所属だコラ」
いよいよガチのメンチを切り始めた青メッシュ男。やはり、マジモンの奴らだけあって威圧感と迫力がパネェ。
「黙れタコ。だぁら椋島だっつってんだろが。俺らは今、人を探してンだ。酔っ払いの相手してるほど、暇じゃあねぇんだよ」
しかしそれでも動じない嵐は、さも面倒くさそうな回答をする。
「あんだと……?」
すでに戦闘態勢に入ってしまっている青メッシュ男に、若干慌てた様子の金髪ツンツンヘアーが、
「ちょちょちょビキちん! 飲みすぎだしやばいって! だからその娘、確かキョースケさんのッ……」
「うっせぇすっこんでろハヤテ! おい赤頭、テメェ、元『神風』五代目総長のこの俺様に盾突くってこたぁユニオンのメンバーじゃねぇな? ここでの礼儀、イチから教えてやろうか」
「……あ?」
青メッシュ男は言うが早いか嵐に向かって風を切るような右ストレートを繰り出し、嵐がそれを腕で捕らえた瞬間、隙を突いた強烈な後ろ蹴りが再び炸裂する。
青メッシュ男の背中に刺繍された『神風』の文字が優雅に宙を舞い、ゴッ‼ と、今度こそ鈍い音がして、避けきれなかった嵐の巨体が派手に後方に飛んだ。
「嵐ッ‼」
嵐は後方にあったテーブルに突っ込み、派手な音と共に、テーブル諸共食器やグラスをひっくり返す。
――一気にその場に注目が集まり、なんだなんだと、辺りがざわつき始めた。
再び私の肩に手を置いた青メッシュ男は嵐を見下ろすと、ニヤリと笑って言った。
「ここではなぁ、『弱いモンは強いモンに従う』――それが全てなんだよ。自分の女を守りてぇ、人を探してぇってんなら、目の前に立ちはだかった全ての壁を自力で排除して、力尽くで奪い取るこったな」
相変わらず酒臭い……けれど、それどころじゃねぇ。
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