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「嵐ッッ! ちょ、ちょっと、なにすんっ……」
嵐のもとへ歩み寄ろうとしたら、青メッシュ男に奪い去られるよう強い力で肩を引かれた。
「行こうぜナナコチャン。アッチで恋バナでもしようぜ」
「ちょっとはなせよ! っつうか誰だよナナコって⁉︎」
「だあもう、ビキちん‼︎ んっとにもう、その飲むとめちゃくちゃ絡む癖やめろって! だからその子は……どわっと」
「副総長どいてくださいっ! ヒビキさん、どうしたンすか⁉︎ なんかすげぇ音しましたけど……」
「おい、誰だぁ? 酒乱のヒビキさんに酒飲ませて絡んだバカは!」
「飲ませたのも、絡んだのも嵐の方じゃねぇッ! コイツが勝手に……って、どこ触ってンだよ⁉︎ はーなーせっつうの!」
律儀に突っ込んでいるうちに、青メッシュにピチピチパンツの太ももを触られるわ、同じ特攻服を着た奴らがわらわら集まってくるわで、にわかにその場がカオス状態となる。
(まずい、まずいって……! エル、どこだよ!)
慌ててポケットから携帯電話を取り出そうとした……が、ブオンって、物凄い音がして、大きな黒い影が青メッシュめがけて降ってきた。
何事かと思って顔を上げると、
「なっ⁉︎」
降ってきたのは……――いつの間に起き上がっていたのか、大きく跳躍した嵐、だ。
「……ッ‼」
「らァッッ‼」
マウンテンブーツを履いた嵐の長い足が目にも留まらぬ速さで空を切り、ズパンッと、青メッシュ男の顎の辺りに強烈な回し蹴りが炸裂する。
一瞬にして吹っ飛ばされた青メッシュ総長の身体が、物凄い勢いで床を転がっていった。
ぶわっと舞った砂埃。その衝撃の一幕に、唖然としたようにその場で立ち尽くす周囲の奴ら。
「な……」
「お、おい、嘘だろ……」
「て、てめぇっ……⁉︎」
華麗に着地した嵐はすぐさま長い腕を伸ばし、意地でも奪い返すように私の体を引き寄せ、自分の後ろに隠した。
そして頭に巻いていたタオルをスルリとほどくと、それをボクシンググローブのように腕にぐるぐると巻き付け、いつになく鬼気迫る眼差しを前方に向けて言った。
「『弱いモンは強いモンに従う』……か。なら話は早ェな。俺ははるばる椋島から"真鍋京介"に会いに来てやった御蔵嵐だ。俺の邪魔してぇヤツぁまとめてかかって来やがれ!」
身構え、開戦を知らせるように吠えた嵐の雄叫びに、その場の空気が一気にざわりと殺気立った――。
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