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「エミリ、帰るぞー!」  部活が終わるといつも呼ばれる。今日もまた一緒に帰るのか……。 「エミリー!駿太君に愛されてる~!」 「やめてよ、ただの近所の幼馴染みだから。」  友達から冷やかされる。毎日この繰り返しだ。  マンションが隣同士で、帰り道が全く同じってだけで、私は毎日駿太と一緒に帰ることになっている。  駿太とは、保育園時代からの腐れ縁だった。何故かクラスもずっと一緒で、部活も同じバスケ部だった。だから、小学校の頃から高校生の現在まで、登下校は常に一緒だった。  ママ同士が仲良しで、小さい頃は休日もよく一緒に出掛けたり遊んだりしていた。だから、駿太はもう家族みたいなものだと思っていた。  帰り道、二人で並んで歩いた。気付けば駿太は私よりもはるかに背が高くなっていた。小学校高学年までは私の方が大きかったのに。 「明日、女子も練習試合?午前で終わる?」 「うん。男子は?」 「俺らは午後から練習試合。ウチの学校でやるから、エミリ観に来いよ。」 「どしたの?急に?いつもそんなこと言わないのに。」  初めて駿太に誘われた。何だか不思議な気持ちになった。  それから私たちはたわいもない話で盛り上がり、歩き続けた。  その時だった。 「エミリ!」  駿太がいきなり私の肩を強く抱き寄せた。  私は何が起きたのか、一瞬では分からなかった。 「危ねぇな、あの自転車!歩道走って来やがって!」  前方から自転車が来ていたことにも気付かず、私は話に夢中になっていたのだった。  駿太の体はとても大きくて、小さな私をすっぽりと包みこんだ。とても温かくて、物凄い安心感があった。 「お前って、ホント小っちぇーなー!めっちゃ華奢じゃん!」  駿太はとびきりの笑顔で私の頭をポンポンとした。私は恥ずかしくなって、思わず駿太を突き放した。 「いいの!私はママに似たの!」  私は駿太よりも先に歩き出した。駿太は後から走って追い掛けてきた。  何だろう……、また不思議な気持ちになった。明らかに、心に異変が芽生えていた。  翌日。私は午前中に近隣の高校に練習試合をしに行った。  昨日のことが頭から離れなくて、試合に集中出来ずにいた。何度もミスをしてしまい、途中でベンチにおろされた。監督から厳しく注意され、めちゃくちゃ落ち込んだ。  こんな状態で駿太の試合を観に行っても、心から楽しむことは出来ないかもしれない。そう思った私は、練習試合が終わった後、駿太に電話をして、断るつもりだった。 「駿太?ごめん、今日の練習……」 「エミリ、早く来いよ!待ってるからな!」  結局断り切れず、私は駿太の練習試合を観に行くことになった。  学校へ着いて体育館へ向かう途中、渡り廊下で駿太と出会った。 「エミリ!来てくれてありがとう!ちゃんと観てて。絶対勝つから。」  そして私たちはグータッチをした。駿太は私に手を振って、体育館へ走って戻っていった。  何故だろう……。心の奥がキュンと鳴ったような気がした。  私はギャラリーから試合を観戦した。試合は両者接戦で、とてもいい試合展開だった。男子の試合はやはり迫力満点だった。でも、  どうしてだろう……?  私、駿太だけを目で追ってしまう……。  試合は見事勝利した。私は惜しみない拍手を送った。  ギャラリーを降り、体育館を後にしようとしたその時、駿太がやって来た。 「エミリ、俺、この後自主練するから、少しだけ付き合ってくんない?」  みんなが帰った後、駿太と私は二人で練習した。時間も気にせず、私たちは夢中になっていた。  最後にフリースロー対決をした。結果は私の勝利。これに駿太は納得がいかないと言い張り、泣きの一回で再度対決した。今度は駿太の勝利。結局ドローで対決を終えた。  二人で後片付けをしていた時だった。 「なぁ、エミリ。最後に一本だけスリーポイント打っていい?」  もちろん了承した。私は、1つのボールを駿太にパスした。 「あのさ…、これが一発で入ったら、俺の願い事叶えてくれる?」  駿太の放ったシュートは────────  見事に決まった。  駿太は私の元へ駆け寄った。 「エミリ、あのさ……、     俺の彼女になってよ。」 「うん……、いいよ。」  ただの幼馴染みから、恋人へ変わった瞬間だった。
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