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「やられたらやり返す。千倍返しだ!」
「新しいの作らないでくださーい」
私はまたくすくす笑うと、彼が可笑しそうに目元についた涙を拭った。笑い過ぎると涙が出るのが彼の特徴だ。私が彼のお腹にパンチをすると、彼が「うえっ」と大袈裟に言って腹を押さえる。
「何すんだよ」
「べっつにー」
「暴力反対ー」
「痛いと思ってないくせにー」
「あは、バレた?」
彼がへらへら笑いながら言うと、私は口角を上げて楽屋へ歩きだす。彼と二人でいれるのは撮影現場だけ。外に出れば、記者がスクープを狙って構えているから、ここだけが私にとって彼と安心して喋れる場なのだ。
いつか、外を二人で歩ける日が来たらいいけど、でもそれはまだまだ先な気がする。だから今はどうかこのままで。この幸せだけは、奪わないで欲しい。
私は両手を組むと、神様に向かってお祈りする。それを見て彼がぷっと吹き出すと「何してんの?」と笑いながら言った。
「神様にお祈りしてるの」
「何て?」
「この幸せがずっと続きますようにって」
「ほう」
「真夏君、彼女が出来たり、結婚したりしても、私とずっと仲良くしてね?」
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