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「何だよ急に。それは勿論、親友ですから」
彼はそう言うと、私の顔を見て少し照れたように口を手で隠す。それを見て私は「照れてる〜」と茶化すと、彼が頬を摘まんで「うるさい」と言った。
嘘。
本当は彼に恋人ができてほしくないし、結婚もしてほしくない。その相手は私であってほしいと思ってしまう。
やっぱり簡単には抑えられない。恋って恐ろしい。どうか奇跡を起こしてくださいとお祈りしてしまう。彼には言わないけど。でもいつか彼に言える日が来るまで、どうかこの幸せが続きますように。
私はそう心で言いながら、楽屋の前で彼と別れると一人、楽屋の中に入った。そしてそのままずり落ちる。
「ヤバいなぁ……」
一人ぽつりと呟くと、ポケットに入れておいたスマホが鳴った。見るとマネージャーからの迎えの連絡だった。「駐車場にいる」というメッセージに私はスタンプで返事をすると、しばらく切り返えそうにない感情に膝をつきながら荷物へ移動する。荷物に辿り着くと、そのまま鞄に顔を突っ伏してうずくまった。
恋って恐ろしい。それをつくづく感じる。芽生えてしまったこの感情は、簡単には引っこ抜けないのだ。
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