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駄目だったわけではなくて。
「先生、私の絵は変だって言われます。変な絵だから駄目かもしれないけど見てください」
そう呟いたユイちゃんの絵を見てねぷた絵師の先生はにっこりと笑います。
「確かに変に思う人もいるかも知れないが、そういう風に言われる絵はね、君にしか描けない絵だから。君にしか紡ぎ出せない物語だから。安心しなさい。ねぷたロボットにこの絵は、ねぷたにしてもらうから。自信を持ちなさいね」
「ありがとうございます」
だからユイちゃんは泣きました。嬉しくて。
その日、ユイちゃんは数体のねぷたロボットがユイちゃんの絵をねぷたにしていくのをねぷた絵師の先生と夜遅くまで見ていました。
「ねぷた絵師の先生もねぷたロボット使うんですか?」
「いいや。僕は手作業でねぷたを作るよ。どちらがいいか悪いかじゃなくて、やりたいように作りたいようにするのでいいんじゃないかい? 作ることってそういうものでしょう? 楽しくできる方法を選べばいいよ」
「そうですね。先生の言葉、私にはありがたいです。これからも変だって言われても私にしか描けない絵を描いていこうと思います」
「うんうん。ねぷた祭りはちゃんと見に来るんだよ。せっかく君の絵がねぷたになるんだからね。技術がどんなに進んでもお祭りの楽しさは変わらないからね」
ねぷたロボットがユイちゃんの絵をどんどんねぷたにしていく中、ユイちゃんはこっくりこっくり居眠りを始めます。
ユイちゃんの描いた絵がねぷたになって弘前の街を練り歩く八月の夢を見ながら。
おしまい
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