二日目

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 やつらの姿はなくて。あの場所でもなくて。頬がぴりぴりして、熱くなって、涙が目尻から零れて。それから、彼に連れてこられたモーテルだと気付いた。  瞬きをする。遅れて気付くのは、幻覚を見ていたこと。  彼がいる。  彼は僕に何かを言っていた。聞こえないけれど、頷く。  彼は軽く息をついた。 「怖い夢を見ていたの」  怖い夢。  僕は首を振った。あれは夢なんかじゃない。現実だった。いつでも僕のそばにあったもので。どこまでも僕についてくるもので。  彼が僕の体を摩擦する。大丈夫だと繰り返しながら。  ぐるぅりと僕は部屋を見回す。やつらが、影に隙間に隠れている気がしてならなくて。そうしないと落ち着かなくて。  早く見つけないと。そう思った。  早く見つけないと、やつらはそこから膨張して、この部屋すべてを埋め尽くす。  しかしやつらはいない。  嘘。そんなはずはない。やつらはどこかに隠れている。  彼は大丈夫だと繰り返した。 「あれは悪夢だったんだ」  彼は言った。  悪夢。  僕は呟いた。本当にそうだったのだろうか。
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