授業

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授業

 歓迎会が終わり、割り当てられた部屋に案内された少年は、同室の生徒と部屋の前で対峙していた。 「お前が俺の同室か。こんな小さなガキがどうして入学なんて出来たんだよ」  赤色の短髪で服装をやや崩して着こなし、ズボンのポッケに両手を突っ込んだ状態で少年を見下ろす。 「今日から宜しくね」  少年は片手を差し出し、握手をしようとしたが生徒は手を出して扉のノブに触れる。 「ふん、仲良くなる気はねえよ。俺は少しでも多くの知識を学んで誰よりも早く、ハンターに昇格してやるんだからな」  生徒はそう言うなり部屋へ入り、勝手に陣地を決めてベッドに潜り込んだ。少年は空いているベッドに入り眠りに付いた。  翌朝、寮での朝食を済ませてから学園に赴く少年含む生徒達。すると、校門前には先輩達が先に到着しており其々の教室案内をしていた。  少年も先輩に案内され、教室に辿り着く。先輩達は案内が終わると又校門前に向かっていった。  教室の空いている席に適当に座り授業が始まるのを待つ生徒もいれば、教台近くで屯い話に興じる生徒も居た。  少年は知り合いがいない為、段違いの奥まった席に着いて教室を眺める。時間ギリギリに入り込んだ最後の生徒に続いて教師が入ってきたことで、席に着いていなかった生徒達が慌てて席に着く。 「おはようございます。私が今日からこの教室で皆さんをハンターへと導くべく、教鞭を振るわせて頂く担任となります。どうぞ宜しく」  そう言って、実際に手に持っていた短い鞭を教台に叩き付けて、ビシリと肌に向けて叩かれたらさぞ痛いだろう良い音を響かせた。  小声でひそひそ話をしていた生徒達は口を閉じて真っ直ぐ前を向き姿勢を正し始める。 「授業を始めます。貴方達はバイヤーとして入学しました。よって、戦闘実習は週末のみ行い他全ての時間を知識の詰め込み、暗記に費やして貰います」  教師は黒板にチョークでモンスターの名前を幾つか書いていき、チョークを置いて振りかえる。 「戦闘実習で相対するモンスターを抜粋しました。この中で、自分の使い慣れた武器や道具を用いて、一番好きな料理に使う食材を確保してください」  そして、又黒板に向き直りモンスターの部位毎に下処理の方法や、合う調味料の種類を書き足していった。生徒達は必死になって黒板の字をノートに書き写していく。  だが、少年だけはノートを広げることなく黒板の字を眺めていた。書き終えた教師がチョークを置いて教室を見渡した所、少年の様子を見て話しかけた。 「貴方はノートに書き写さなくても、暗記できるのですか?」 「じいちゃんに教えて貰った、旨い食材の部位がまだ書かれていないから、他は覚える必要ないのかなと思って」 「!? 書いていない部位は幾つか有りますが、その何れも取り扱いが大変難しく、入学したての貴方達では食材を駄目にしてしまう恐れがあります」 「僕は全部取り出せますよ。解体は散々やらされましたから」 「貴方のお爺様は、もしかしてハンターなのですか?」 「はい。トリプルランクって自慢していました」  ざわり。生徒達が少年を驚愕の眼差しで見つめる。一人、虚勢なのか視線を向けず舌打ちをしていたが。 「静かに。トリプルランクは世界にたったの三人しかいません。さらに高齢者は御一人だけ。御子息が居たとは初耳です」 「僕は養子縁組です。家族はじいちゃんだけです」 「そうでしたか。でしたら尚更貴方がバイヤーで入学したのはおかしな話です。知識量がトリプルランクから教えを受けていて足りないなんて」 「じいちゃんに教えて貰った事を書いたら、試験結果が悪かったんです」 「・・・。後で貴方の答案用紙を私が再確認します。下手をしたら貴方は既にハンターの資格が有るかもしれません」 「僕はバイヤーのままでも構いませんよ。じいちゃんが教えてくれなかった細かいところが学べそうだし」  教師はため息をついた後で中断していた授業を再開した。その後、少年もノートに黒板の内容を書き始め、初日の授業が終わった途端にトリプルランクのハンター肝いりがこの学園に入学した事が瞬く間に広まった。  翌朝、教師に呼び出された少年は採点ミスであったことを聞かされたが、バイヤーのまま滞在すると改めて話し、教室に入れば奇異な目で見られながらも授業は進み、戦闘実習の日迄時は流れた。
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