グルメアカデミー

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グルメアカデミー

 一つの大地があった。そこはかつて邪神が神に倒され眠りし場所。数千年の時を経て、大地には知恵を持つ生命、人類が誕生した。  村から街、都市へと発展を遂げ、人類の国が出来上がった。  そしてある日を境に大地から瘴気が漏れだし始めた。漏れ出た瘴気は、邪神が目覚める前兆だった。  神は瘴気を一ヶ所に集め、ダンジョンを造り上げた。瘴気によって生まれたモンスターを倒す事で瘴気は浄化され、邪神が復活する事を遅らせるつもりだった。  しかし、人類はダンジョンに気付くこと無く月日が流れてしまい、ダンジョンに収まりきらなくなったモンスターは大地に溢れた。  人類は溢れ出たモンスターの群れに恐怖した。村や街は一溜りもなく滅び、国は多大なる犠牲を払って存続した。  人類は発生源を突き止め、ダンジョンへ潜る様になった。職業の冒険者が誕生した。  だが、漏れ出す瘴気に対してダンジョンのモンスターを倒す比率が低く、何れ又モンスターが大地に溢れ出てしまう。  神はモンスターを倒す事で旨味を与える様にした。後にドロップと呼ばれる現象が起きた事で、ダンジョンに潜る冒険者は増えていった。  神は手応えを感じたので、ダンジョンを増やして瘴気を分散させる事にした。人類はダンジョンが増えて混乱したが次第に慣れ、生活の一部として浸透していった。  そして、人類の中に奇妙な者が現れ始めた。ドロップするアイテムには目もくれず、モンスターの身体に興味を示し、それを嘱す者が居たのだ。  始めの頃はゲテモノと卑下されていたが、国王が偶々モンスターの肉を料理に出されて食べた事で一変した。  ダンジョンのモンスターは高級食材に値すると。ドロップを売り、生計を立てていた冒険者とは別に、新たな職業が誕生した。 『グルメハンター』  彼等は単身でダンジョンへ潜ることが出来、長期間ダンジョン内で生息可能だった。  冒険者達は、彼等を仲間に加えることでダンジョン攻略が捗り、更にはダンジョン内で美味しい料理にもありつける為、グルメハンターは冒険者よりも待遇が良く引く手数多となった。  しかし、グルメハンターに成るには料理の腕が有るのは勿論、様々な知識や力、そして時空間属性の適性が必要だった。  時空間属性は『インベントリ』と呼ばれる時空間倉庫が発動可能で、その中には様々な物が入り又時が停止していた。  食材の鮮度を落とさず保管可能で、大量の調理器具や調味料を所持出来なければならないからだ。  時空間属性の適性が無い場合でも、魔道具のマジックバッグを所持していれば、資格有りと判断された。  但し、魔道具は高額で支援者又は出生が裕福でなければ所持は困難だった。  並大抵の努力では叶わず、才能もしくは財力が無ければ成れない職業なのだ。  そんな狭き門の職業を数多く排出すべく国が資金を出し、ハンター育成学園『グルメアカデミー』が設立された。  そして、戦闘力が低い生徒は『グルメポーター』、知識が乏しい生徒は『グルメバイヤー』、時空間属性の適性が無い生徒は『グルメウォーカー』と呼ばれる様になった。  卒業してハンターに成れる生徒はほんの一握りで、ダンジョンに潜り成長してグルメハンターに成れた者は数える程度。代わりに国が召し抱えたりと待遇は貴族階級並み。  人類が目指す一番憧れの職業はグルメハンターとなっていった。神はやがて、ダンジョンの宝箱にマジックバッグを入れる様になり、生まれてくる新しい赤子には時空間属性の適性をほんの少し多く与えだした。  そして月日が流れ、時空間属性の適性が有る一人の少年が、グルメアカデミーの入学試験に合格した。
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