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とある公園~オオカワ・ハイツ前
望田の意思はすでに希薄になっていた。しかし、微かに残る人間的な思いが、こんなことを続けていいのか、と疑問を浮かべる。
身体は何か大いなる意思が動かしている。それに反発することはできないし、するつもりもない。もはや自分は、とてつもない悪意に呑み込まれているのだ。
夜の闇の中を歩く4人。先頭に早由利、続いて堀井、富山、そして望田……。
それぞれの手には武器になる物があった。早由利と堀井はスコップ。富山と望田は鎌だ。望田は鋭い物が苦手だったが、今、大いなる意思に守られている間は、何でもできる。
若者6人を殺害しバラバラにした後、何度か横浜市内を彼らの部位を持って駆けまわった。まるで獣のように素早く動きまわることができた。
あの、早由利の胸に張りついている筒のような物、邪筒と言うらしいが、その力の及ぶ範囲内であれば、自分達は無敵だった。そしてその範囲が、徐々に広がっているように感じられる。
早朝に若者達の頭を置いた公園に、再度来た。
まわりはシンと静まりかえっている。公園は立ち入り禁止になっていた。当然だろう。近づく者はいない。
躊躇いの感情など全くなく、あたりまえのように公園内に入り込んで待っていると、まわりを警戒していたと思われる警官が2人現れた。
「君たち、そこは立ち入り禁止だよ。事件のことは知っているだろう? すぐに……」
そこまで言って、警官の一人が絶句した。もう片方も息を呑んでいる。
こちらの4人の目が、赤く光っているからだ。そして、手にしている物も確認したのだろう。
片方の警官が無線でどこかに連絡し始める。もう1人が意を決したように4人を見据えた。
「持っている物を下に置いてください」
しかし、4人とも動かない。
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