オオカワ・ハイツ~その近辺

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オオカワ・ハイツ~その近辺

 富山達が住んでいたアパートの玄関で女性の惨殺死体が発見された翌日、そこはニュースやワイドショーの取材陣が多く訪れ、野次馬達が集まるなど、騒然としていた。  午前中の今、近隣まで含めてざわついている。  そんな中、ルゥルアは様子を探るように辺りを行き来していた。  牧島や智秋には、しばらく一人で外を出歩くのはやめろと強く言われていた。砂漠の炎(Desert flame)に狙われているのだから、安易に動くのは危険だ。それはわかっている。  だが、元々ジッと閉じこもっているのは苦手な性分だし、邪筒を一刻も早く発見しなければならない。何もせずにいるのはイヤだった。  一応いつもと服装は変えている。ホットパンツや穴あきデニムにTシャツということが多かったが、今はカジュアルながらスーツを着ている。髪もまとめてお団子ヘアにした。伊達メガネもかけて、ちょっと見では別人のようだ。  まだ寝ている智秋を置いて出てきた。砂漠の炎(Desert flame)の連中が、とんでもない作戦に出たからだ。  牧島と因縁のある比留川に以前と同じような猟奇殺人をさせ、その遺体を富山達がいたアパートにひけらかすように置いたのだ。当然、近隣の人々の恐怖感はとてつもなく膨らんだ。  邪筒を持った富山達は、間違いなくこの近く、少なくとも同じ区内にいる。なので、連中にとって意味のある場所で発生した恐怖や混乱といった負のエネルギーを、必ず嗅ぎとるはずだ。野次馬に紛れたりその辺りを近所の者を装って歩いたりしているかもしれない。
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