74人が本棚に入れています
本棚に追加
ルゥルアは注意深く行き交う人々を観察しながら、近辺を歩いてまわった。
目立たないよう充分に気をつけた。砂漠の炎の連中も当然同様に考え、この辺りを探っているだろう。気づかれたら面倒だ。
もちろん何か緊急事態となれば、智秋にはタップ一つでSOSが行く。GPSを頼りにすぐに向かってくれるはずだ。
牧島も今日は同様にこの辺りを探る時間をつくると言っていた。おそらく午後になるらしいので、午前中は自分が探ることで見落としの可能性を極力減らしたかった。
昨夜自分のつくった料理を美味しそうに食べていた彼の顔が思わず目に浮かび、慌てて振り払う。
チッ。あいつ、普段ロクな物食ってないな……。
わざとらしく舌打ちしてからまた足を速め、例のアパートの前を通り過ぎた。
しばらく行くと、ふと見覚えのある姿が遠くを歩いているのに気づく。
あれは、ダーシュ……?
間違いなかった。ラフなジャケットにデニムという何気ない服装だが、岩のような体格は隠せない。彼と一緒に3人ほど男が歩いている。砂漠の炎の部下達だろう。
やはり、遺体をおいたのは奴らだ。そして、邪意魔に操られた富山達が付近に現れないか見てまわっている。
ルゥルアは自分の姿をもう一度確かめる。
こんな格好をしたことは、イラクでも日本でもない。すぐに気づかれはしないはずだ。それなら……。
砂漠の炎のアジトがどこにあるのか、探りたかった。おそらく比留川恭兒という男も匿っているのだろう。牧島に教え、確保する助けになれば……。
もう一度ダーシュの方を見て、更にその近辺にも注意を払う。シャフラの姿はない。分かれて見まわっているのかもしれない。
慎重に距離をとりながら、ルゥルアはダーシュ達を尾行し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!