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ルゥルアはもう一度窓に近づく。鉄格子の向こうに暗い空が見えた。そして、その下には海。ここは崖の上のようだ。
くそっ、と鉄格子にしがみつき力を込めて引っ張ったり揺すったりするが、ビクともしない。
ふと、背後に気配を感じた。
あっ!
振り返り、息を呑む。
比留川が立っていた。いつの間にかドアが開かれている。
「やあ、起きたんだね。寝顔が可愛かったからもう一度見たかったけど、まあいいや。このあと、永遠の眠りにつくからね」
ゴクリ、とつばを飲み込む。恐怖で身体が震えるが、何とかキッと睨みつけた。
比留川の赤い目が、光を増す。その胸には邪筒が張り付いている。底のRedCrystalも光り続けていた。
「え、永遠のって……。私を殺すつもりか?」
「大丈夫。美しく描いてあげるから。そして、その美しさのまま眠るんだ。すばらしいことだろう?」
嬉しそうな口調で言う比留川。言葉を発するたびに赤い光が増す目が不気味だ。
「わ、私なんか、全然美しかぁねえぞ。ほら、こんな格好してるし」慌ててボロボロのシャツの裾を翻したり、裾のほつれたホットパンツを強調するルゥルア。無理矢理笑顔をつくるが、引きつっている。「な? 描く価値なんてないから、やめとけって」
「謙遜しなくていいよ」
一歩、また一歩、とゆっくり近づいてくる比留川。
「け、謙遜じゃねぇって。中身は最悪だ、ってよく言われるし。口は悪いし、乱暴だし、がさつだし、素直じゃないし……。じ、自分でもわかるんだ。こいつ最低の性格してんなぁ、なんて……」
後退りながら必死に訴える。自分で言っていて情けなくなってきたが、仕方ない。
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