車内~比留川邸敷地内

2/14
前へ
/270ページ
次へ
 「お、おい、あれは……」  智秋が脅えた声を出しながら前方を指さした。  複数の人影が見える。ゆっくりと近づいてきた。その顔がわかると、牧島も思わず「うっ!」と呻く。  血まみれの者達。富山やあのアパートの住民、そしてシャフラとダーシュ。  「バカな。マンションに首が転がっていたはずなのに……」  そう、比留川が智秋のマンションに現れたとき、生首が飛んできたのだが……。  6人の死んだ人間達、それがユラユラと揺れながら2人に迫ってくる。  牧島は特殊警棒を取り出し伸ばした。智秋はベルトを外して手にする。鞭の代わりにするつもりらしい。  一番前、おそらくシャフラが更に迫ってくる。その途中、首から上が外れて飛んだ。ガァッと口を開けた顔が、すごい勢いで牧島目指してくる。  おぞましさと恐怖を感じながら、それを避ける牧島。その横で、慌てて蹲る智秋。  一旦地面に転がったシャフラの頭が、再び浮き上がる。  「う、うわぁっ!」と智秋が叫んだ。視線の先では、他の者達の頭が宙を舞う。  胴体も手を上げながら迫ってきた。  くそっ!   牧島は覚悟を決めると、首のないシャフラの胴体に駆けより、跳び蹴りを食らわせた。  硬く、まるで鉄板のような身体だが、牧島の蹴りを受けて後ろ向きに倒れる。  しかし、のっそりとまた立ち上がってきた。いくつかの頭が牧島に迫る。  飛んでくる頭を、警棒で殴りつけた。一度死んだ人間の生首を叩き落とすのは嫌悪感しかないが、仕方ない。  何度も地面に落ち、また浮き上がってくる生首……。  そして、胴体も不気味に迫ってくる。  智秋がベルトをがむしゃらに振りまわしていた。一応それが当たり、誰かの生首が怯んでいる。  何とか洋館に迫る牧島。それにつれ、生首や胴体の勢いが増す。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加