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「お、おい、あれは……」
智秋が脅えた声を出しながら前方を指さした。
複数の人影が見える。ゆっくりと近づいてきた。その顔がわかると、牧島も思わず「うっ!」と呻く。
血まみれの者達。富山やあのアパートの住民、そしてシャフラとダーシュ。
「バカな。マンションに首が転がっていたはずなのに……」
そう、比留川が智秋のマンションに現れたとき、生首が飛んできたのだが……。
6人の死んだ人間達、それがユラユラと揺れながら2人に迫ってくる。
牧島は特殊警棒を取り出し伸ばした。智秋はベルトを外して手にする。鞭の代わりにするつもりらしい。
一番前、おそらくシャフラが更に迫ってくる。その途中、首から上が外れて飛んだ。ガァッと口を開けた顔が、すごい勢いで牧島目指してくる。
おぞましさと恐怖を感じながら、それを避ける牧島。その横で、慌てて蹲る智秋。
一旦地面に転がったシャフラの頭が、再び浮き上がる。
「う、うわぁっ!」と智秋が叫んだ。視線の先では、他の者達の頭が宙を舞う。
胴体も手を上げながら迫ってきた。
くそっ!
牧島は覚悟を決めると、首のないシャフラの胴体に駆けより、跳び蹴りを食らわせた。
硬く、まるで鉄板のような身体だが、牧島の蹴りを受けて後ろ向きに倒れる。
しかし、のっそりとまた立ち上がってきた。いくつかの頭が牧島に迫る。
飛んでくる頭を、警棒で殴りつけた。一度死んだ人間の生首を叩き落とすのは嫌悪感しかないが、仕方ない。
何度も地面に落ち、また浮き上がってくる生首……。
そして、胴体も不気味に迫ってくる。
智秋がベルトをがむしゃらに振りまわしていた。一応それが当たり、誰かの生首が怯んでいる。
何とか洋館に迫る牧島。それにつれ、生首や胴体の勢いが増す。
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