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「ぐわぁっ!」
獣のような声が何重にもなって放たれた。比留川の口からだ。目を押さえて後退る。
よしっ!
牧島は更に嵩にかかって攻め立てる。次々に繰り出す警棒が、比留川の目を狙う。
素早く避け続ける比留川だが、さすがに無理があり、足をもつれさせて倒れた。そのまま転がっていく。
牧島は置かれていたイスやテーブルなどを投げつけた。ダメージの程はわからないが、少しは怯ませているだろう。
この僅かな合間を利用して、牧島がルゥルアに駆け寄る。彼女の身体を抱き起こした。
「大丈夫か、ルゥルア?」
「げ、元気いっぱいに見えるか?」
微かに笑ってみせるルゥルア。
「よし、今のうちに外へ逃げるぞ」
足下がおぼつかない彼女に肩を貸しながら、急いでアトリエを出た。玄関に向かう。外に出れば、アブルがいる。
玄関前の広間に来た。あと少しだ。だが……。
バキバキバキッ! と音を立て、広間の壁が破壊された。比留川が現れる。いや、その姿は……。
全身の筋肉が太くなりつつあった。巨大化している。そう、まさに、米田が怪物化したように。
「牧島さん……。もう、許さないよ。一気に、叩きつぶしてやるよ」
声が野太くなっている。それが何重にもなって響く。
うっ! と呻く牧島。ルゥルアが「いやぁ……」と声を漏らしながら抱きついてきた。
目の前で更に巨大化していく比留川の身体。胸に張りつく邪筒のRed・Crystalが、強い光を放つ。
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