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「ルゥルア、一人で歩けるか?」
小声で問いかける牧島。
「なんで?」
やはり小声で応えるルゥルア。
「ヤツは、今はまず俺を狙っている。俺がひきつけている間に外へ逃げろ。アブルがいる」
ルゥルアが息を呑む。しかし……。
「やだ。一緒に戦う」と彼女は何度も首を振る。
「バカ。無茶だ」
「バカって言うな」
グワァァッ! と激しい雄叫び。巨大化した比留川が襲いかかってくる。
「うわぁっ!」
2人して叫んで逃げる。比留川が振るった拳が壁を破壊した。
牧島は「逃げろっ!」と怒鳴りながらルゥルアの体を突き飛ばす。
「牧島っ!」と叫ぶルゥルア。その姿が大きな影に隠れた。比留川だ。怯まず肩から体当たりをする牧島。アメフト選手のように突き上げる。
しかし、当然のようにはじき飛ばされた。
フロアを転がり距離をとる。赤い目を爛々と輝かせて追ってくる比留川、いや、すでに怪物と言った方がいいか?
その巨体にかかわらず素早い動きで、目の前まで迫ってきた。
くそっ、ここまでか……?
だが、バキッと音がして、比留川の動きが止まった。
牧島は目を見張る。なんと、後ろから比留川の背中にルゥルアがイスを叩きつけていたのだ。
バラバラに壊れたイスを見て、彼女が唖然とする。そして、振り向いた比留川に睨まれ、ビクッとして後退った。
その時――。
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